法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『NHKアーカイブス』ポーランド民主化20年

再放送に解説をつけくわえる普段の『NHKアーカイブス』とは異なり、複数の映像資料を編集再構成し、主要人物のインタビューも入れた、かなり力が入った内容だった。『NHKスペシャル』や特別番組枠で放映しても良かったのではないかと思ったくらい。


主な内容は、自由労働組合「連帯」がポーランドで浸透していった過程と、支援していた日本人の半生。
NHKは、「連帯」が労働者の権利を守る「建前」*1を捨てて、政治活動へ傾斜していった過程を写し撮っていた。日本の労働組合が政治活動に関わることへ拒絶感を持つ人は、どう考えるだろうか。
組合指導者が来日したことを伝えるNHKニュースも、よくアーカイブされていたと思う。反共と目されていた「連帯」が日本の労働組合で講演し、拍手されていた光景は興味深い。
また、通訳や支援活動、印刷用紙の入手*2で活躍した梅田芳穂氏は、世界で同時多発していた学生運動に影響されつつ、運動が敗北したポーランドの大学を避けて「連帯」支援に身を投じたという。国外退去を命じられて家族と離れ離れに暮らしたり、秘密警察に盗聴されたりと、わずかな描写からでも一党独裁体制下における支援の難しさ、対抗した梅田氏の矜持が感じられた。

*1:この言葉はNHKが用いていた。

*2:ポーランド国内では質の悪い紙しかなく、地下出版発行の障害となっていた。かすれた字を手書きで補っていたほどだという。そこで地下出版のガリ版刷りに使用する紙は日本から持ち込まれた質の良い紙によって、ガリ版刷りできる部数が飛躍的に向上したそうだ。