法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』正義の味方セルフ仮面/いそうろうジャイアン/友だちになってチョンマゲ

まずは一週間前、原作初期で印象的な短編セルフ仮面を30分にふくらました「正義の味方セルフ仮面」。
よく知られた秘密道具を応用した、しゃれたSFだったセルフ仮面の裏側を描いていて*1、なかなか楽しめた。映像で嘘をついたのは残念だったが、前半CM入り前と結末を重ねあわせるオチが面白い。
しかし、格好いいヒーローとその真実という落差を演出するためには、登場ポーズくらいは格好よくしてほしかったところ。
あと、自分で自分を助ける原作テーマに合わせたとはいえ、のび太に鏡写しな幼児が成長するアニメオリジナル展開が、ちょっと無理やりだったかな。原作はドライな教訓をふくんでいるのに対し、アニメの感動がウェットすぎる。
脚本は岡部優子。「ぼくよりダメなやつが来た」*2のようにウェットな面がある原作では良い改変をしていたのだが、今回は合わなかった感がある。


今週は「ジャイアン誕生日スペシャル」で、前後半ともにアニメオリジナルストーリー。
「いそうろうジャイアン」はジャイアンスペシャル回。家出したジャイアン野比家に居座ってしまう。予想通りに感動的なところへ落着したが、のび太ドラえもんは事情をよく知らないままで、ジャイアンの内面だけで決着したので押しつけがましくない。
「友だちになってチョンマゲ」は、知人の知人をたぐっていって、有名人にたのみを聞いてもらう秘密道具というアイデアが素晴らしい。知人の知人を経れば、7人ほどで世界中の誰とでも繋がりを持てるという、一種の数学的比喩表現*3を率直に映像化する。藤子F作品らしい科学的思考のプリミティブな興奮にあふれており、意外な接点が存在する人間関係の面白さもあり、様々な舞台を移動する映像的な楽しみもある。現実では、知人の知人の知人……という遠さでたのみを聞いてもらえるはずはないが、それをクリアするのが秘密道具というガジェットだ。チョンマゲのダジャレデザインはどうかと思ったが、しずちゃんが被って恥ずかしがる場面に活かされていた。

*1:原作では裏側を読者の想像にゆだねていた。

*2:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080718/1216506023http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080719/1216506410

*3:現実に妥当性のある考えでもある。たとえば、本人とは一面識もないが、知人の知人の知人にアニメ『ふたりはプリキュア』の西尾大介監督がいるし、また別の知人の知人の知人の知人の知人くらいに平成天皇が来る。どちらもかなり濃い人間関係に限定してもたどりつく。