法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』剛田、いつ?/ぼくを、ぼくの先生に

「剛田、いつ?」は、のび太ジャイアンに配達作業を丸投げされる。のび太は漫画を買うため外出していたので、楽しみにしていたドラえもんは配達を助ける秘密道具を出す……
清水東脚本、佐野隆史コンテ、中本和樹作画監督による完全アニメオリジナルストーリー。サブタイトル前にのび太が秘密道具姿でデリバリー。昨年末の大晦日でも見られたが*1、今回はスペシャルでもないのに珍しい演出。
出前を題材にした原作は半年ほど前にアニメ化されたが、より現代的な風刺にブラッシュアップ*2。おそらく流行ネタをそのまま秘密道具で子供社会で再現しただけだが、いかにもGAFA的な資本主義の搾取が描かれた。
今回のジャイアンはお駄賃を前渡しされていることが母との会話で示され、ヤングケアラー的な問題ではないことを明確化。秘密道具「なんでもデリバリーバックパック」のデザインや機能をつかった活躍で釣って、友人をただ働きさせていく。今回はアニメオリジナル秘密道具の常として原作よりややデザインが現代的でも、物語の必然性があるので違和感がない。
さらにジャイアンは近所にホームセンターができたため剛田商店が苦境にあるという虚偽で友人をあおる。愛郷心をかりたてた地域おこしが労働力の搾取につながってしまう問題も風刺したと読みとれる。
海外からの注文によって想定外の事態に巻きこまれるオチも、グローバル資本主義的な風刺として完成度が高い。


「ぼくを、ぼくの先生に」は、家庭教師をつけられそうになったのび太が、ひとりでがんばると母を説得。しかしやはりすぐに飽きてしまい、ふと親身に助けてくれる人物を思いつくが……
タイムパラドクスをとりいれた初期原作を、意外なことに2005年リニューアル以降に初のアニメ化。現在のテイストにあわせつつ、展開そのものは忠実に映像化された。
アニメオリジナル描写で、ちょっと未来の街も描かれる。たかだか数年先なので子供たちが世代交代しているだけで風景は変わらないのだが、一年もせずに文化が一変する感染症を体験している現在、なかなか悩ましい描写だと思った。