法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『メグとセロン 三三〇五年の夏休み』上巻/下巻

『アリソン』から続く架空世界を舞台としたシリーズ作品から、サブキャラクターを用いたスピンアウトシリーズの一作目。六人の少年少女が学園の地下に隠された謎を解く、ライトなミステリ。
このシリーズの特長として、戦争そのものではなく周辺の、見すごされやすく忘れられやすい出来事を題材にしている。この作品でも、最後に明かされる動機は意外かつ合理的。怪しむべきキャラクターが少ないため真犯人の見当はつけやすいが、真相を全て見通すことは難しいだろう。ミステリアスな謎かけと、泥臭く重い謎解きの落差が印象深い。
しかしキャラクター紹介編にあたるためか、やたら頁数が多いわりに事件のスケールが小さい。加えて、下巻は物語が終わった後、主要キャラクターを主人公にした短編が二つ入っているという意味不明な構成。これならば、上下巻のそれぞれ冒頭に短編を置いてキャラクター紹介をかねるとか、いっそのこと短編を入れず一巻にまとめるべきだったと思う。


なお、後書きによると、シリーズをアニメ化した『アリソンとリリア』が作られたおかげで、商業的に展開できたそうだ。
アリソンとリリア』はマッドハウス手塚プロダクションに丸投げし、西田正義監督が全話コンテを手がけていた。結果として演出から作画まで良くも悪くも中位安定し、記憶に残らない作品だった*1。しかしこのスピンアウト小説が発表される場を用意しただけでも、意味のあるアニメ化だったと思う。

*1:例外的に、リリアとメグがダンスの練習をする場面の作画が良かったが、もしかして『メグとセロン』で主人公に抜擢されることを考慮して、ヒロイン2人のダンスシーンに力を入れたのだろうか。考えすぎかもしれないが。