前作でSDとキャラクターデザインをつとめた小村敏明と川村敏江が、それぞれ演出と作画監督を担当し、映像全体が充実。キャラクターデザインより描きこんだ瞳や、終盤の表情作画が特に印象的だった。
脚本を担当したのはシリーズ構成の前川淳だが、プリキュアとオーディションの間で心がゆれる展開も、前作の傑作回*1と同じだ。それゆえ、細かい差違が浮かび上がってきて面白い。
前作は、キャラクターの人数が多く、二年目ということもあって、主人公達はほとんどゆらがなかった。対する今作は、外見の年齢こそ高くなったが、キャラクターの人数はしぼられていて、主人公達の葛藤を念入りに描くことができる。
そうして戦闘後に泣きじゃくるピーチとパインの顔を正面から見せる演出が、成長途上ならではの力強さを感じさせる。オーディション部屋でベリーが発した「ごめん」という台詞がミスディレクションになったのも、「私、完璧」が口癖で、ともすれば自己愛の強さを感じさせる性格だからだろう。
完成されていないキャラクターが互いに影響しあう、しっかりしたドラマが展開されていた。
戦闘では、必殺技発動中にナケワメーケが攻撃してきたり、ナケワメーケが強化されていることが明言されたり、細かい描写で現実味を出したことに感心した。
戦闘のTV生中継を見てベリーの心が動かされる展開も、郵便をモチーフとした寓話的な前作と比べて、より現実に近い世界観と感じさせる。
「密かに」強化していると重ねてプリキュアに宣言する敵幹部、一歩間違えれば御都合主義になりそうなカオルちゃん、あまりに突拍子もない次回予告の映像……そうした息抜き場面も手抜かりなく配置し、時間いっぱい楽しめる回だった。