法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム00』セカンドシーズン#20 アニュー・リターン

出撃するたびに撃墜されて脱出し、今回にいたっては撃墜場面すら省略され脱出艇に乗っているイノベイターが、もはやギャグ。まさか、異能生存体であるコーラサワーの能力を模造したものとかいう裏設定があったりしないだろうな。


それはさておき。
今回は物語と関係ない描写を徹底的に廃し、ライルとアニューの関係に描写をしぼっていた。けして描写量の多くなかった二人だが、相応に感情移入して見ることができた*1
ライルの代わりにアニューを撃つと宣言し、実行し、さらには宣言通り相手の感情を受け止めた主人公も珍しい。周囲の意思を尊重しつつ、迷わず信念を貫く主人公だから、混迷する物語を前進させることができる。あらかじめ宣言されていたので、よどみなく登場人物の感情に乗っていける効果もあった。
敵が基地に侵入する展開で、ロボットアニメの様式美らしい楽しさもあった。特に、奪われたパーツを合体して取り戻す展開はスーパーロボットアニメの王道だ。単にお約束を守るだけでなく、多数のキャラクターが明確な目的をもって各個に活躍しており、ここだけを見れば教科書的といっていいくらいの脚本だった。


コンテは寺岡巌、演出は錦田慎也。トランザムの演出で、ストロボ状の残像を見せながら目に止まらない速さで動かすのではなく、周囲をスローモーションで動かした対比で高速移動を表現していることが印象に残った。素早さを表現しつつ殺陣の細かい動きが楽しめる。
キャラクター作画監督森下博光で、作画監督協力に千葉道徳。整っているとは言いがたいカットが多かったが、唐突に力の入ったカットが入り交じり、笑えるくらい統一感がなかった。もちろん、要所に力を入れる配分は正しいのだが。
メカ作画監督大塚健で、原画に斉藤久、鴨川浩、他。モビルスーツの体型や挙動が普段よりデフォルメされている。心持ち有機的な描線で描かれた人型機械は、あたかも登場人物の情念が乗り移っているかのよう。互いにゆずらないアニューとライルの戦いを、入念な作画で底から支えていた。

*1:また前回の引きを放置か、と思いもしたが。