ゆっくりと破滅に向かって突き進んだ前回と違い、今回は助かるかどうかの境界線上をゆれうごく物語。見ている間は相応に楽しめたが、引きのばされ間延びしている感もあった。
アニメオリジナルストーリーの伏線が回収されたこともいいが、卵泥棒は再登場しただけで終わって残念。エリンを引きとめるなり助けるなりしないまでも、物語にからませることはできたはず。
他にも中盤で唐突にナレーションが入ったり、ソヨンを生け贄に推したワダンがいきなり同情するそぶりを見せたり……物語の方向性が明確で、全体の印象を悪くするところまではいかないものの、違和感ある描写が散見された。
あと、エリンは転びすぎ。
映像に関しては、シリーズの転換点らしく充分に力が入っている。
湖のたもとで振るわれる剣を逆光で見せる冒頭から、紅葉で暗喩される母の死*1、闘蛇の石像が並ぶ草原……わかりやすい演出が多い『獣の奏者エリン』だが、今回は間接描写が多用されている。個々の間接描写はありきたりでも落ち着いた画面を作り上げ、背景の残酷さを浮き上がらせていた。コンテ演出は布施木一喜。
杉本道明の一人原画*2も予想外。使い回しや背景のみの省力カットも多いが、人物や闘蛇の挙動から、村屋敷のレイアウト、水エフェクト作画まで、すみずみまで神経の行き届いたアニメートが楽しめた。