法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『装甲騎兵ボトムズ』のクメン編の評価が高い一因は、純粋に映像が良いから

GYAO!で配信中の『装甲騎兵ボトムズ』が、2クール目のクメン編に突入していた。『地獄の黙示録』を思わせる熱帯のゲリラ戦が展開されるエピソードだ。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00066/v13083/
この作品はアニメアールという作画会社が担当した回の評価が高いが、2クール目は全体をとおして見どころが多い。
たとえば第21話はアニメアール回ではないが、かなり作画がいい。谷田部コンテ演出のうまさも感じた。第24話も良い。動画にアニメアールが入っているが、中村プロ回。キャラクターは整っているし、コクピット内部の書き込みや精緻さは群をぬいている。黒ベタ影が特徴的だが、西澤晋原画の力だろうか? 作画監督は過去も現在もあまり注目されていない人物。


もちろん作画だけでなく、クメン編で作品世界が完成したことも高評価の一因だろう。
この作品では全体のストーリーを最初に決めず、リレー小説のように3人の脚本家が交互に書きすすめた*1。硝煙がただよう地味なリアルロボットアニメのようで、危機と脱出が連続するサスペンスとして娯楽性を高くたもった。なおかつ1クールごとに完結して舞台を変えることで、うまく情景の変化とまとまりをつくりあげていた。
制作しながら作品世界をつくっていったのは映像もそうだ。徐々にメカ作画や爆炎作画が現代的になりつつ、たとえばローラーダッシュのような作品を代表するメカ描写がようやく完成した。1クール目のウド編でのローラーダッシュは、急速に方向転換するターンピックの前振りのように短く描写されるばかり。作品世界を象徴するロボット戦闘賭博「バトリング」が描かれるのも2回くらいしかない。

*1:黒澤明監督の映画『隠し砦の三悪人』で成功した手法。