法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』天井うらの宇宙戦争

のび太ドラえもんが出したTVゲームに飽きて、新しいゲームをねだった。しかたなくドラえもんはミニチュアの宇宙船へ実際に乗りこんで遊ぶゲームを出す。
さっそく楽しむのび太だが、謎の宇宙船に撃墜され、生身に戻っても追撃される。そこで怒って宇宙船を叩き落すと、小さなロボットがあらわれて……


メインスタッフが交代した第2弾は、『スターウォーズ』を身近な空間でパロディした原作を映像化。比較的に頁数の多いエピソードだが、短編では珍しくアクション描写にコマを使った内容なので、物語そのものの密度は薄い。そこで原作よりもパロディの分量を増やしてアクションシーンを足し、30分枠いっぱいの娯楽活劇として完成させた。
コンテ演出は前回でコンテを担当した山口晋で*1、メカ作画監督を鈴木勤、原画で桝田浩史らが参加。映画『新・のび太と鉄人兵団*2に通じるスタッフワークで、手描きメカの魅力がつまった映像を展開してくれた*3。原作を再現した空中戦は期待にこたえる質と量で、排水溝を使った高速戦闘や近づいてくる歩行戦車などのアニメオリジナル戦闘は嬉しい驚き。キャラクター作画も見どころが多くて、部屋から逃げだすドラえもんの動きはコミカルだし、敵基地を攻略する場面ではサーベルアクションも楽しめた。
ゲストキャラクター描写もいい。原作でR3-D3と名乗るロボットは、アールツーディーツーならぬアールオービーオーと名乗り、囮になったり宇宙船を単独で操縦したりと大活躍。内田真礼が声を担当するアーレ・オッカナ姫は、逆に原作と同じく活躍しないまま勲章をあたえたがる、王侯貴族を皮肉った人物像が再現される。原作では料理が盗まれたことを怒るだけのジャイアンの母親も、意外な展開かつ斬新な情景で脱出を助ける。
また、原作の初出は元ネタ2作目の公開以前なので、ダースベーダーならぬアカンベーダーにはドラマがなかった。そこを今回のアニメ化で現在のダースベーダー像に近づけるかと思いきや、黒マントのスタイルを影で兵士にバカにされる描写を入れたり、勝手に一人で決闘をいどんで失態を演じたりする。これではダースベーダーというより、それを真似しようとしたキャラクター、カイロ・レンだ。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 - 法華狼の日記

今回の敵が、祖父にあこがれるだけの小人物なのも興味深かった。主人公側ともども戦いのスケールを適度に縮めて、136分という時間でも物語をきっちり終わらせられたし、ストームトルーパーにあきれられるほど言動が幼すぎるという一種の魅力があった。

しかし悪い印象ではない。多重パロディとして完成度が上がったといえるし、むしろバカバカしい物語にふさわしい人物像となった。


なお、「夏の1時間スペシャル」として放映されたが、番組冒頭でドラえもんが告知するだけで、特に『クレヨンしんちゃん』と内容で連携しているわけではなかった。
他に、EDとして「ドラえもん音頭2017」が始まり、各話スタッフはEDでクレジット。つまり、ひさしぶりにOPとEDが同時に番組に組みこまれたことになる。

*1:『ドラえもん』ぼくミニドラえもん/ぞうとおじさん - 法華狼の日記

*2:感想はこちら。『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』 - 法華狼の日記

*3:ちなみに今回の原作は2005年のリニューアル時もアニメ化されたが、メカ描写は3DCGにたよっていて、手描き作画の見どころは最後の撃墜くらいしかなかった。金子志津枝作画監督なので、キャラクター作画は良かったのだが。