法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『フレッシュプリキュア!』第1話 もぎたてフレッシュ!キュアピーチ誕生!!

〜ひとことでまとめると、セーラームーンへの先祖帰り〜
主要スタッフが、志水淳児シリーズディレクター前川淳シリーズ構成、香川久キャラクターデザインへ、全て交替。志水淳児は初期3作品の劇場版監督を担当したものの、本編演出は極わずか。前川淳香川久にいたっては、東映アニメーション作品を何度も手がけてきたものの、プリキュアシリーズは初参加。
この枠を長年にわたって務めてきた鷲尾プロデューサーも退き、女児向けアニメという理由で自主規制してきた水着シーンが次回予告で登場している。


初見で印象的なのが、頭身が高くなり、シャープで装飾を廃したキャラクターデザイン。加えて、初回を見る限りではデフォルメされた表情の多用が印象的だった。
これまでのシリーズでも主人公が面白い表情をすることは多々あったが、どちらかといえば崩し顔が印象的で、絵柄を変化させるようなデフォルメは多くない。あまり頭身や絵柄を変化させない少年マンガ的フォーマットで作ってきた前期までから、少女マンガ的フォーマットに近づけてきた雰囲気。
しかしアクションでは逆に、シリーズ初期に関わっていた志水淳児が演出したためか、激しくも現実に近い格闘戦だった*1。主人公は生身の状態でも敵にマイクスタンドで殴りかかる勇気を見せるし、組み付いて投げ技をしかけたりもする。
背景美術も、キャラクターデザインが現代よりになったことに対して、現実の町並みを思わせるものに。やや無国籍な雰囲気だった前期や前々期と比べて、下町らしい雰囲気を漂わせている。
意図的かどうかはわからないが、一見したデザインは大きく変化させているのに、実際に映像で見るとシリーズ初期に戻しているよう感じられた。


物語はテンポを最優先したかのような展開。
アバンタイトルでファンタジー世界における事件発生、本編は主人公達の日常生活を切り取り、敵側の思惑が説明台詞で足早に語られ、巻き込まれる主人公……志水淳児監督の劇場版プリキュアと全く同じだ。30分に満たないアニメでは、あわただしすぎた感がある。TVアニメなのだから、敵の戦う理由くらいは次回に持ち越しても良かっただろうに。


誰もいないのに説明台詞を発する敵描写も問題だが、説明する映像も、分かりやすさを優先したというよりデザインが詰め切れていない様子。サブタイトルバックがただの静止画だったり、主人公が憧れているはずのダンスで作画が弱かったり、時間のなさは端々から伝わってくる。必殺技も、イメージ背景を使用していないところから見て、おそらく完全状態ではないだろう。
時間がない状態で立ち上げて、未完成な感が残るのはプリキュアシリーズの通例ではあるのだが*2、キャラクターデザインが垢抜けているだけに厳しく感じた。


最後に、OPは今一つ。作画は整っていて悪くないが、作品の方向性が演出から伝わってこない。歌唱力も微妙すぎる。
EDは3DCGのダンスという点でまず驚き、クオリティの高さにうなった*3。立体として破綻せず、それでいてアニメの印象を残しているモデリングが、巧いアニメフィギュアを思わせる。くるくる表情を変えているのに不自然さがほとんどないことも素晴らしい。

*1:プリキュアの人数が増えて飛行可能になり、さらには必殺技も増えてきたため、最近は少年マンガ的な戦闘を行う少女達という魅力が薄れていた。

*2:逆に、前期を受けた形で二期目へ突入した場合、中盤でネタ切れを起こす。

*3:変身バンクも、アップではアイテムと手が3DCGで描画されていたが、手書きアニメから徐々に移行していく予定なのだろうか。