法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 七人の魔法使い』TV放映版

劇場で観た時と比べて、印象が良くなっている部分もあれば、悪くなっている部分もある。
とりあえず作品自体の評価以前に、放映形態が去年並みに印象が悪い。左右カットは我慢できるが、本編で画面下半分を覆い隠す番組宣伝テロップと、EDを中略して現実世界におけるブラックホール問題が解決していないのは問題。主題歌が唐突に切れるため、中略自体もあからさますぎる。
声優変更前の映画は、場面削除こそあったもののEDまできちんと流していただけに、ED以降にも見せ場を用意する新生ドラえもん映画でのEDカットは残念。


作画はとにかく安定して良く、特に安定した爆発エフェクトと、アニメーターに演技をまかせたらしき日常芝居で、見ているだけで楽しい画面にしあがっている。芝居は自由奔放な一方、キャラクターが統一されているため、安心して見やすい作りにもなっている*1
魔界星での冒険やラストバトルが旧作と比べて尺を取っていないのは、日常やキャラクター同士の関係を重視したからだろう。そのためか、冒険途上ではなく固定された場所における一対一のやりとりが多いので、全体的に冒険している感覚が薄い。
監督だけでなく補佐2人をつけており*2、コンテの統一性も今一つ。作画が良いおかげで映画らしい画面は保っているものの、ところどころが緊張感に欠けていた。


原作から変更された脚本は一長一短。
よく批判の対象となっている原作や旧作での唐突なドラミ登場は、きちんと伏線を張って納得がいく作りになっている。月の光に照らされている地球に悪魔が攻める展開にまで補足する描写を入れた点には、純粋に感心した。
しかし、メデューサがらみの仕掛けは、宣伝で事実上あからさまだったためか印象が薄くて残念。悪魔が月光に弱い理由を考えると、秘密道具の月光灯にまで弱い描写も疑問が残る。
満月博士が満月牧師に変えられている等、魔法が並行世界の科学にあたるという原作のSF的視点が薄められているのは、現実と魔法世界を対比させる映画の方向性として納得できた。

*1:もちろん『のび太の恐竜2006』のように安心できない作画も楽しいのだが。

*2:ただし、アニメ映画では特別に珍しいことでもない。