法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『バトルスピリッツ 少年激覇ダン』第33話 タッグバトル!神造巨兵オリハルコン・ゴレムの恐怖

今回は菊池晃作画監督。基本的に美麗でいて太目の描線で作画されたキャラクターが少年向けアニメとして素晴らしい。少年時代のブルストムの可愛らしさは、いかにも元ジーベックのアニメーターがデザインしたキャラクターらしいと感じさせる。しかし、どうも敵女性の胸の谷間だけ、素人みたいなおかしな作画に見えた。
物語の本筋は主人公初のタッグバトル。ダンとクラッキーともに勝手に戦いを進め、連携がとれた父子に押されっぱなしな状態で次回に続いた。しかし息子であるブルストムが父の言いなりで戦っている上、楽しそうじゃないと主人公が指摘しているので、見せかけの連携よりも心が通いあった側が勝つ展開になるのだろうと予想はつく。予想がつくからつまらないという話でもなく、ブルストムの衝撃の真実や、父子の隙がない攻撃などは楽しかったが、前回で激突一辺倒は駄目と悟ったはずのダンが激突にこだわりすぎている展開に整合性がない。

『天装戦隊ゴセイジャー』epic12 ミラクル・ゴセイヘッダー大集合

荒川稔久脚本らしい観念的な説教が前面に出ていた物語は好みではない。
しかし今回は、とにかく巨大ロボットの合体パターンに驚いた。機構としては極めて単純なのだが、玩具情報を全く見ていなかったため、サブロボットがひっくり返って合体した場面に思わず声を上げてしまった。

『仮面ライダーW』第33話 Yの悲劇/きのうを探す女

劇団☆新感線中島かずき脚本。アニメオタクとしては『天元突破グレンラガン』のメイン脚本家という印象が強い。
ともかく今回と次回だけのゲストライターらしいが、1クール目に印象的な活躍をした敵幹部の遺恨がからんでくる上、前半と後半で主人公が全く同じ行動をとるという物語構造の面白味もある。シリーズの世界に深く関わりつつ、展開そのものにしかけがある脚本で作家としての個性を出す。ゲスト脚本として完璧に近く、見ていてうなった。

『ハートキャッチプリキュア!』第13話 真実が明かされます!キュアムーンライトの正体!!

座古明史演出、河野宏之作画監督
いつもの河野回らしくクレジットは3人原画だが、馬越修正を考慮しても作画は悪くない。頭身高いキャラクターの活躍が多く、絵柄が合っていること。以前から3人の誰かが爆発エフェクト作画を得意としていると考えているだが、ちょうどクライマックス戦闘で爆発を多用して印象的な画面を作っていること。組むことが多い演出家と作画監督なので、得意分野を熟知しているのだろう。敵戦闘員スナッキーが人々を襲っているシーンも、微妙にアニメーターの手癖が出つつ、前後と比べて違和感ない、ちょうどいいあんばいの個性だ。
作画枚数の節約も絶妙。特に序盤の朝食演出が素晴らしい。美味しそうに調理されつつ、孤独でまずそうな食卓という矛盾した状況を、超俯瞰で料理だけを見せるカットで表現。普通の食事描写には作画枚数を使ってていねいな芝居が必要なものだが、今回はあえてまずそうに見せるため、料理と人物を同じ画面に入れないという演出をつらぬき、同時に作画の手間を減らしている。
一つだけ残念だったのは、襲いくるスナッキーを月影ゆりが受け流していく殺陣が、少しぎこちなかったこと。もう少し作画枚数を使えば良い場面になりそうなのだが、制限がきつかったのだろうか。


脚本はシリーズ構成が担当。
以前の話と比べて登場人物の言動に違和感はあるが、よく見ると重大な矛盾はあまりない。基本的に、祖母一人が情報を隠していたり、方便としての嘘をついているという解釈で説明がつくようになっている。今話だけで見ても、「その後どう?」といいつつ駅の売店で母親が働いていることを知っていたり*1、謎の「イケメン」の正体探しをごましたり、かなり意識的にそういうキャラクターとして描いているのだろう。
打ち合わせはしつつも複数脚本家で手分けして書いてきたため細かな齟齬が重なってきた物語を、シリーズ構成として補足描写しつつ、うまく情報整理しなおしたといったところ。

*1:書かれない会話場面で知らされたとか、再会する前から同じ駅の売店で働いていたとかいう可能性もないではない。しかし、ここは祖母が色々なことを熟知していることを示す描写と読むべきだろう。

『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』第55話 大人たちの生き様

池畠博史演出で、テレコムに下請けを出した回。古巣で演出をするという情報があったが、そういえばテレコム出身の演出家だったか。
アニメーターの特色を加速させる池畠演出、ていねいで完成度の高い仕事をするテレコム、残念ながら互いの良いところを消しあっていた感もある。原画にテレコムアニメーターと別に、いまざきいつき、田中宏紀もいたが、どちらも短時間。
ただしアクション作画が楽しめないというわけではない。上半身裸で筋肉りゅうりゅうの男達がぶつかりあう姿は、人体デッサンが正確でこそ映える。スロースの高速移動もこれまでで最もアニメ演出として良かったと思うし、煙の形状もなかなか良かった*1


話の内容は基本的に原作通りなので既読者として驚きはない。
好みの話をすれば、大総統の帰還は下手に動かさず、どっしりカメラをかまえた止め絵で処理した方が、より迫力が出たと思う。今回はアクションで止め絵が目立ったし、大総統の帰還は枚数を節約して他で使ってほしかったところ。

*1:残念ながら今回で退場したが。原作の話になるが、この作品でホムンクルスはあっさり退場する傾向がある。前アニメがホムンクルスの退場を先のばしして、最終回時点で3人も生き残っていたことが信じられないくらい。