敵を撃退するプリキュアがTVで堂々と報じられ、人々が応援する世界。薄暗い部屋でひとり、TVのプリキュアを見つめる少女がいた。
 プリキュアに変身する愛乃めぐみたちは保育園の人形劇で失敗して結果的に笑いをさそっていた。すると人形がプリキュアに助けをもとめてきて、愛乃たちは人形の国に招待されるが……
2014年に公開された劇場版。他社で監督としてキャリアを積んだ女性演出家で、今期の『キミとアイドルプリキュア♪』でシリーズディレクターに抜擢された今千秋の、シリーズ初監督作品。
ガールズアクションアニメとして目新しさこそないが、さまざまな設定を無駄なく活用して作品の埋もれた魅力をひきだし、ジャンルに求められる全てを高度に満たした快作。
 まず身体障碍者のゲストヒロインの魂を救う物語に、TV版で断念した愛乃母の病気がかかわってくる構成*1を劇場版で完成させたのかもしれないと思ったし、そうであればここまで高いポテンシャルを秘めていた作品だったのかとも思った。その身体障碍は敵の策略によるものという真相は少し残念だったが、尺が短い劇場版で物語を完結させるための妥協かもしれない。
 主人公の最終変身にあわせて挿入歌が流れる定番の演出も、歌そのもの良さや、幸せはささえあうものというメッセージの力で感動的なクライマックスにしあがっている。つらいことがあるのはみんな同じという言葉を、あきらめではなく私たちの未来を信じる言葉として敵にぶつける。映画館でミラクルライトをふって応援するシリーズ恒例の上演形態を実感的な演出として活用している。
 TV版では思わせぶりに真相を隠して子供を矢面に立たせて視聴者に嫌悪されていった神ブルーを*2、何も知らない立場にしつつ早々と敵が拘束することで、力をふるえないなりに子供たちを助けようとする大人として成立しているところも良い。
 冒頭で作品フォーマットを説明する通常戦闘があり、次に主人公が向かう異世界が実際は敵地なので序盤から敵がさまざまなかたちで登場して、アクションの回数と物量が充実しているところも良かった。もともとのキャラクターデザインがシンプルだからこそ、ひとりのアニメーター大和田寛がすみずみまで絵を修正してスクリーンに映える適度に濃厚な絵になっている。
*1:『アニメージュ』の「この人に話が聞きたい」で長峯達也シリーズディレクターが悔やむように語っていた。

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