2時間SP。ミニ映像コーナーの動物や果実などの光景も楽しい。
公式サイトのバックナンバーに記載がないが、後半に放送された、エチオピアのダナキル砂漠で食塩をはこぶキャラバンを取材したドキュメンタリも印象深かった。
気温が50度から60度にたっする、世界で最も暑いとされる場所。内陸部にありながら1000万年前にマグマ上昇でできた谷に海水が流入し、乾燥して堆積した塩が分厚く大地に広がっている。その採掘場で税金をはらい、職人が目分量で正確に切りだした塩のかたまりをラクダに積んで、輸送する。
ドキュメンタリは世代交代を考えている親子のキャラバンに密着。小麦粉と他の穀物粉をまぜて焼き石をくるみ、焚火とあわせて内と外から同時に焼くパンを道中で食べる。ラクダに塩水をぬって寄生虫をふせぐようなキャラバンの技術を教えて、塩採掘場の近くにある美しい自然を紹介したりする父親だが、十数人いる息子は遅刻したり興味がなさそうにふるまったりするギャップがなんともいえない。
「オーストラリアの超かわいい動物」は、オーストラリアやニュージーランドにいる世界最小のペンギン、フェアリーペンギンの生態を紹介。保護活動をおこなっている女性にカメラが密着する。
特にフェアリーペンギンの多いオーストラリアのフィリップ島だが、かつて別荘地だった時代は事故やペットにより絶滅寸前になった。そこで1985年に政府がすべての別荘を買いあげて立ち退かせ、無人の島とすることでフェアリーペンギンの安全を確保し、数千の巣箱を設置した。ペンギンにはマイクロチップを埋めこみ、通り道に体重をはかる器具を設置することで、人間が接触せずに通過したペンギンの情報をすべて集める工夫などは面白い。
しかし人間を完全に追いだしたわけではなく、むしろ浜辺からあがってくるフェアリーペンギンを見るために多数の観光客が海岸に密集するようになっている。ペンギンのパレードを近くで観察するための透明な窓や、上から見おろす足場も設置され、地面はライトアップされる。身体的な接触などはしないし、むしろ人間の存在が天敵を遠ざけるのかもしれないが、ちょっと自然への影響が気になる光景ではあった。
「変わった地球」は、世界各地の奇妙な現象についてさまざまな専門家が仮説をたてて、真相を的中させようとする恒例番組。
ただ今回は明確な答えがなかったり、天災の複合による事故だったりして、意外性や面白味は少なかった。離岸流の前触れになる菱形の波など、謎めいた自然現象の光景そのものは興味深いものが多かったが。
「ドードーヒーローズ:安楽死直前のミニチュアホース」は、障碍をもったため人間がみはなした飼育動物をひきとり、生かす活動をしている女性と3歳のに密着取材。
米国ペンシルバニア州で75頭もの障害をかかえた動物とともに生活している母子。今回は四肢に異常があるミニチュアホースをひきとりにカナダまで行き、歩行を助ける器具を装着。さらに仲間をつくって孤独から救おうとする。
ミニチュアホースの存在は知っていたが、小型化するために先天性の異常が起きやすいことは初めて認識した。生まれながらの障碍であっても、人間の罪がかかわっていることがあるのだ。
「都会生活の先住民、洞窟に帰る」は、フィリピンのパラワン島の洞窟に住んでいた少数民族タウット・バトが政府のすすめで都市へ移住した顛末を紹介。
8人2家族が政府にあたえられたちいさな住居で生活し、タガログ語も話せないので仕事につけたのは男ひとりだけ、それも草むしりのような単純作業。ボロボロの服装で市場にやってきて、さまざまな商品を手にとるが購入できるのはわずかな食料くらいなので、商売人に嫌悪される。
結局1家族は洞窟にもどることを選び、深い森をわけいり川をさかのぼるように進んでいく。都市では精彩を欠いていた人々が、2日間ものあいだ裸足で軽快に動き、自然のなかから食料を確保して植物を組みあわせた寝床もつくる。洞窟に住みつづけていた親戚と合流して、水流にしかける罠や釣り、吹き矢や鳥もちなどで食料を確保。洞窟内で竿をふりまわして蝙蝠をつかまえる手法は『パーマン』で見たことがあるが、これだったのか。
しかし洞窟で技術をいかして以前のように安定した暮らしができるかというと、そうではなさそうだ。女性は食料は以前より少なくなっていると語り、取材の最終日には政府が移住させたがった理由の土地開発の爆音が聞こえる……
政府が少数民族を守ることは必要だろうが、文化を尊重せずに拙速に移住させて終わるのではなく、望んだ場所に住まわせたまま懸念されている教育や医療などを補助するような政策をおこなうべきではないだろうか、と感じられた。
「浸水した洞窟から奇跡の救出」は、フランスのピレネー山脈にある巨大洞窟で、外部の洪水が流入し、探検していた7人が脱出不可能になった事故の紹介。
1999年、40mの井戸をほってグーフル・デ・ヴィタレル洞窟にはいった7人。洞窟内に流れる川がつくりだした神秘的な光景を楽しんでいたが、2日目に豪雨が発生して河川が氾濫、洞窟が水没してしまう。探検隊は用意していた救命ボートふたつで空洞に逃げこむことに成功したが、食料は少なく、すぐに鍾乳石からしたたり落ちる水で飢えをしのぐしかなくなる。
のべ1000人以上による救助がおこなわれた。水位が上昇した時に探検隊が逃げられそうな、洞窟が上にのびているポイントは三つある。そこで水位がさがるのを待ってカヤックで洞窟をすすみ、三つあるポイントに生存者がいないか探そうとするが、15mものぼった大きいポイントには誰もいなかった。そもそも水が天井までたっしていたので、そこに探検隊が逃げこんでいなかったのは不幸中の幸いだった。
ふたたび豪雨が発生して水位が上昇したこともあり、洞窟をさかのぼっての捜索を断念。地面から掘削して生存の可能性がある場所まで穴をあけ、もぐりこんで探検隊を発見。ついに9日かけた捜索で全員を生還させた。
探検隊が捜索隊の感謝のために小さなケーキをとっていて、しかし当然のように腐っていたというエピソードなど、映画のようなユーモアも感じさせる救出劇だった。