法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』地球は謎と危険がいっぱい大自然はミステリー2HSP

さまざまな大自然の驚異や人間とのかかわりを紹介する2時間SP。


ホテル特集では、フランスでは経営危機におちった動物園が巨大な窓ごしに動物の生活を楽しめるホテルを開始、予約でいっぱいになるほど大成功しているという。
スイスの自然のなかで地面を水平にしてベッドをならべただけの屋外ホテルは、夏季限定で大自然を満喫できるとして人気だが、やはり天候悪化には対処できず、しかし人件費などがかかるため払い戻しもされず、4人に1人は代替の山小屋の屋根裏部屋などをあてがわれるという。
他にアスレチックのようなツリーハウスなど。


イギリスからは以前にも紹介された王立救命艇協会の活躍。砂州でとりのこされた子供ふたりを救助しにいったら、助けようとして潮で流された父親を途中で救出したり、砂州には子供をはげますため4人の若者たちがやってきていたり。もちろん批判的な描写はされていないが、二次災害の恐ろしさを感じさせる出来事だった。
逆にYOUTUBEを真似して岩場から飛びこもうとして引き潮で足を骨折した漁師は、救出しにきたボランティア協会員と知りあいで、プロらしからぬ愚行にたがいに苦笑する。


南米エクアドルにあるタヨス洞窟では、半世紀以上前に入った探検家が文字の刻まれた金属板を多数発見したといい、「メタル・ライブラリー」と名づけられている。しかしその後の探検ではそのような遺跡は発見できず、今回あらためて探検隊が組まれた。
かつて月面着陸をおこなったアームストロングも洞窟探検をおこなっており、協力して探検した男の娘アイリーンも参加する。最初に出会ったのは巨大な門らしき石灰岩だが、自然に積みあがったような形状になって下部が崩れ落ちた可能性もあるという。残りも神秘的な光景がさまざまあるが、どれも自然でつくられたものばかり。アームストロングたちが残した地図を拡張することには成功したが、本当に遺跡があったかどうかは謎として残った。
ただ、冒頭でメタル・ライブラリーからもちだされたとされる数枚の金属板を鑑定すると、ひとつが古代のものと推定されるというくだりがあった。もしかしたらメタル・ライブラリーは入口近くにあったが、半世紀のあいだに盗掘されて消えたのではないか、という可能性も感じられた。


以降は動物たちと人間の絆を感じさせる映像集。しかしどれも偶然の運命としては珍しい出来事だが、その解釈は人間の勝手な思い入れを感じさせるものばかり。
しかし後半の世界最高齢の脊椎動物と思われるニシオンデンザメの研究は、地に足をつけていて逆に良くも悪くも違和感があった。密集して飛び回るコウモリの群れがなぜたがいに激突しないかという謎が、しっかり映像を検証すると実は意外と激突していて、鳥と比べてしなやかな羽のおかげですぐ体勢をたてなおせていたという真相も意外でおもしろかった。


マッコウクジラの生態調査でも、狩りの前兆というクリック音を鳴らしながら海中でよってきたクジラを怖がっていたら攻撃はされず、コミュニケーションをとろうとしていると判断したが、やはり人間の思い入れが強いのではないかと疑問をもった。
とはいえ、林のように縦になって眠るクジラの家族の光景や、クジラの皮膚に吸盤でカメラをはりつけて回収する研究手法などは興味深かった。自動で照明をつけたり時間が来ると自動で浮かぶカメラのおかげで、イカを捕食する瞬間を初めて撮影できたという。スタジオでは背中越しにイカが吐いた墨らしき影が映るだけで何も見えないと酷評していたが、クジラのクリック音の変化など貴重な調査であることは事実だろうと思った。


最後はパキスタンの動物園にいる、世界一孤独なゾウ「カバーン」の救出劇。1685年にスリランカから友好の証として贈られたが、飼育員をふたり殺して鎖につながれることに。同じく鎖につながれていた雌のゾウは鎖でできたコブのため死んだらしい。
獣医師は「カバーン」が見物客に見せるダンスは、実際はストレスと孤独による動きと指摘する。そしてSNSではじまったカバーン救出の呼びかけは半年たって、著名歌手シェール*1が参加。シェールが自然保護団体をたちあげることで運動は軌道にのる。
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興味深かったのが、動物園の飼育状況に問題があるとして訴訟をおこしたところ、予想外の勝訴をしたこと。パキスタンで初めて動物の権利を認めた裁判になったという。しかも判決は動物園の閉鎖まで命じた。予想以上の結果で、逆に自然保護団体が急いで動物の移送先を見つけなければならなくなる。
カバーンは先に引用した記事にあるようにカンボジアのゾウ保護区へ移送されたが、人間に不信感をおぼえるように育ったため、獣医師が3ヶ月つきっきりでケージになれさせる。しかしカバーンはちょうど繁殖期に入って、いつもより荒々しい行動をとるように。そこから空路と陸路で12時間かけて移動するなどの障害を乗りこえ、無事にカバーンは保護区に収容された。
スタジオでは1年たったカバーンの現在も紹介され、足の傷はすっかり癒えて、サッカーコート9面分に広がった保護区で元気に生活しているが、パートナーのゾウはまだ見つけられていないとか。SNSでもりあがる社会運動の力を感じるドキュメンタリだった。

*1:洋楽はまったくくわしくないので名前も知らなかったが、映画『バーレスク』でテスを演じている。