「ゾウの大移動」は、なぜか中国西部でゾウの集団が移動した一年半を、対処する人間の奮闘をとおしてダイナミックに描く。移動の原因などははっきりしないので、良くも悪くも災害ドキュメンタリのよう。
野生のゾウが畑を横断する光景に、ドローンなどの最新技術を活用した監視追跡、それをモニターする関係者たちが小さな会議室につめている安っぽい絵面、そして大型トラックを無数に並べてゾウを誘導する力技と、現代中国らしい新旧高安いりまじる情景も印象深かった。
「極寒の南極から28人 奇跡の生還」は、1914年に南極を横断しようとして遭難したイギリス探検隊28人のサバイバルを紹介。こちらも一年半以上という長期の遭難となった。
氷山に船が閉じこめられた日々から、破壊されようとする船から脱出して徒歩での移動、さらに三つの救命ボートのうちふたつを補強材として一つの救命ボートで救援を呼びに行く。
長い時間を圧縮していることもあって状況に変化が多く、映像作品として見ごたえがあった。再現ドラマパートもよくできているだけでなく、当時に撮影された映像資料も多い。このような遭難物で撮影する余裕があること自体が珍しいし、時代を考慮するとさらに貴重だ。
遭難初期に第一次世界大戦が発生したため救援が来ないという、戦争が間接的に被害をおよぼした歴史も印象深い。
「都会の学校に通う生徒が十数年ぶりの帰郷」は、ネパールの全寮制の学校に幼少期から入っている子供たちが、十数年ぶりに家族と再会する旅路を追う。
貧しい奥地から入寮したためか、まともに親の顔も見ていない子供たち。おそらくスマホどころか電話もない社会。長い断絶が親への一方的な怒りや愛着としてあらわれる。
そして長い旅のはて、再会したり再会できなかったドラマをとおしてネパール社会の貧困が描かれるわけだが……そこから子供たちが学校をめぐまれた場所と認識して、家族へ感謝するのは、たとえ事実だとしても学校の宣伝フィルムのようだった。