法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『レッド・スパロー』

 ロシア国内で情報源と接触していたCIA職員ネイトが、警官から相手を助けるために正体を知られてしまう。
 ロシアの母子家庭で育ったドミニカは、病身の母をささえるためのバレエで重傷を負ってしまう。
 それぞれの立場をうしなった男女はスパイとなって接触して、たがいと周囲をあざむいていくが……


 2018年の米国映画。『ハンガー・ゲーム』シリーズの後半をささえたフランシス・ローレンス監督と、主演のジェニファー・ローレンスがふたたびタッグをくんだ。

 主人公が行動的なようで国家や個人の思惑に左右されるばかりで、自由に動くための選択肢も誘導された結果で、しかし最後の一瞬に一矢むくいる……原作はあるが、この構成は『ハンガー・ゲーム』に似ている。
 内容は平凡なスパイ映画だが、ドミニカがいれられるスパイ養成校がハニートラップに特化しているところが独特。このジャンルで利用され搾取されて終わりがちな視点から描いた個性はある。
 映像も平凡で、主人公のバレエには説得力を感じなかったが*1VFXの粗などはなく現代スパイ映画の水準には達している。トーチャーポルノというジャンルがあるが、トーチャーもポルノも短いながら堂々と正面から映しており、日本の映像ソフトなのに性器に修正が入っていないところは感心した。
 しかし約2時間20分の尺は長いし、そのわりにアクションの物量が足りない。残り1時間を切ったくらいから、ようやく主人公の状況に切迫感が生まれる。どんでん返しも悪くはないが、長尺をささえられるほどではない。たぶん同じプロットでも韓国映画なら、たぶん2時間くらいの尺に切りつめつつカーチェイスや格闘戦にボリュームを追加するだろう。

*1:ロシアのプリマドンナになるには、もっと不健康な痩せぎすの体型でないと不自然だと思った。ハニートラップ要員になった時の体型を優先しているにしても、スタンドインやVFXを組みあわせて変化を描けるだろう。