法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『関ヶ原』

幼い司馬遼太郎が過去に思いをめぐらす。苛烈さを増していく豊臣政権に疑問をいだきながら忠誠を誓う石田三成の、行きついた場所を……


司馬遼太郎原作、原田眞人監督による2017年の日本映画。2019年6月にTV放映もされたが、DVDで視聴した。

約2時間半の長尺大作映画だが*1、予想したよりも関ケ原以前の出来事に尺をさいていて、良くも悪くも語り口がせわしない。
同じ東宝の『シン・ゴジラ』を思わせる早口で物語が進み、娯楽として飽きさせない良さはあるが、現代的な言葉とは違うので少し理解が遅れる。
それでいて登場人物の人格などはけっこう現代ドラマ的。それが悪いというわけではなく、過去を素材にしたアクションドラマという感じか。


VFXは最小限だが、かなり広い関ヶ原のオープンセットを作って、そこそこのエキストラや騎馬を集めて、過去の戦争を描いた史劇としては見どころがある。特に馬上の主観視点と、伝達に走る石田三成を正面から映したカットなどは新鮮味があって良かった。
どう見ても時代錯誤な巨大火砲を操り、朝鮮侵略という歴史背景から考えても石田三成の味方になることが疑問な朝鮮人部隊も、景気の良い爆発で映像を楽しくはする。
考えてみると『梟の城』よろしく忍者アクション*2が展開されるリアリティレベルの映画だ。そのスパイ合戦が関ヶ原の合戦にもかかわってくる。
一見した真面目そうな雰囲気からすると期待を裏切られるが、アクション優先のバカ映画と思えばこれはこれで許せる。


石田三成を真面目に平和で理想的な社会を求めた主人公と位置づける無茶も、史実をはなれた時代劇としては成立していた。
残虐な処刑を序盤にじっくり描くことで、この映画における主人公の動機は理解できる。最初に処刑した勢力にいた主人公が最後に処刑を受けいれるという構成もきちんとしている*3
ぐらぐら判断がゆれる小早川秀秋をぎりぎり善良に描いたバランスも面白い。関ヶ原を忠実に再現した決定版を目指したというより、パターンをずらした二次創作と理解すれば楽しい作品だ。

*1:冒頭の司馬遼太郎の語りは、ずっとナレーションとして利用するわけでなければ、結末で回収するわけでもなく、削ってもいいように思った。

*2:けっこう殺陣がきちんとしていて感心した。

*3:これも冒頭の司馬遼太郎回想がなければ、もっと美しい構成になったろう。