法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

スティーブン・スピルバーグ監督が、ハマスの蛮行のみ批判する声明を出したという報道に悩んでいる

ハマス攻撃は「ユダヤ人に対する筆舌に尽くしがたい蛮行」 スピルバーグ監督 - CNN.co.jp

10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃について、公式コメントを発表した。

スピルバーグ氏は、米ショア財団が今月1日に発表した特集の中で、ハマスの攻撃に言及している。同財団は、ホロコースト生存者・目撃者の証言を記録するためスピルバーグ氏が1994年に設立した。

「私が生きている間に、ユダヤ人に対するこれほど筆舌に尽くしがたい蛮行を目にするとは想像もしなかった」とスピルバーグ氏は述べている。

同財団は、ホロコースト後の反ユダヤ主義を記録するプロジェクトの一環として、10月7日の攻撃の生存者の証言や記録の収集も行っている。

 12月6日に出たCNNの日本語記事を、下記ツイートで在日イスラエル大使館が紹介して、映画愛好者のあいだで落胆的な話題となっている。


「私が生きている間に、ユダヤ人に対するこれほど筆舌に尽くしがたい蛮行を目にするとは想像もしなかった」

スティーブン・スピルバーグ氏は、自身が設立した財団の特集の中で、10月7日のハマスによるイスラエルへのテロ攻撃について公式コメントを発表しました。


 たしかにユダヤ系ではあるが、テロリズムに報復するためのイスラエルの不条理な暗殺を批判的なまでに滑稽に描いた『ミュンヘン*1の監督が、という驚きがある。

 同じユダヤ系で『ミュンヘン』もふくめ近年のスピルバーグ作品に脚本を提供しているトニー・クシュナーは、イスラエルのガザ攻撃や占領政策へ反対する運動をおこなったりもしているのに。
「恐ろしいほどに見当違いで理解しがたい政策」:著名なユダヤ人劇作家トニー・クシュナーがイスラエルのガザ攻撃を非難 | Democracy Now Japan

ニューヨークを拠点に活動する団体「占領に反対するユダヤ人の会」(Jews Against the Occupation )が 1月12 日、ニューヨークのイスラエル領事館から数ブロック離れた所でイスラエルのガザ攻撃に反対する抗議行動を行いました。抗議者の中には、著名な劇作家で脚本家のトニー・クシュナーの姿もありました。

 念のため、背景がどうであれ殺戮を批判していけないはずはないとも思うが、その批判が対立する殺戮者によって歓迎されるのであれば違う問題になってくる。


 また、CNN記事に記載された日付で確認すると、コメントを発表したというのは下記ページのことだろう。
Urgent Campaign Records Eyewitness Accounts of Antisemitic Terror Attacks in Israel | USC Shoah Foundation
 簡単に機械翻訳で全体を読んだかぎりでは、たしかにハマスによる残忍な攻撃と、それに喚起された反ユダヤ主義への批判があるだけで、イスラエル側の各政策への批判は見あたらない。
 さすがにイスラエル占領政策や報復攻撃への支持は書かれておらず、あくまでホロコーストと同じようにハマス攻撃の被害者の記録を残すことが反撃になるという枠組みの主張ではあるが……報復というにも過剰なイスラエルの攻撃や反アラブ主義をどう考えているのか問いたくはなる。
 もともとショアー財団はユダヤ人の被害記録に限定せず、CNNが言及しているカンボジアルワンダの他、アルメニアの虐殺なども対象にしている。そこにパレスチナをくわえない理由がどこにある。