公式サイトの表記にしたがっているが、今回のサブタイトルは「スペシャル」と「SP」が重複しているし、放送と見比べても誤表記な気がする。
ショート映像コーナーは世界各地の祭りや、通常より多い動物の群れなど。ひとつひとつもっと深掘りしたドキュメンタリで見たいと思う光景が多かった。
中国からは世界最大の水族館、珠海長隆海洋王国が2014年にオープンするまでの3年間を追う。
水漏れを発見するための注水テストで、巨大な水圧のため水が逆流して管から噴出するほど巨大な水槽。アクリル壁は65cmの厚さ。中には空輸された巨大なマンタやジンベイザメが回遊する。
中国各地から新人のトレーナーを集め、オランダのトレーナーに教育させる。そのトレーナー志願者には泳げない者も。それでも優雅にイルカたちと泳いで、パフォーマンスをできるまでになった。
開館直前に巨大台風が襲って、建物にこそ影響はなかったものの街路樹がなぎたおされたりも。それでも開館は成功し、世界最大の水槽や入場者数などで、複数のギネス記録をもつ水族館となった……
巨大テーマパークの裏側ドキュメンタリとしては物珍しさがあって楽しかったが、どうしてもイルカなどの動体展示およびサーカスじみた曲芸には現代の水族館として正当性があるのかと疑問に思った。事実として、ロシアのドキュメンタリ映画を紹介するAFP記事では、古典的な見世物としての動物園や水族館が中国では新規につくられている代表として名指しされていた。
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フランスからはトゥールースという街一つを舞台にした巨大ロボットの演劇パフォーマンスを紹介。
有名なロボット劇団のラ・マシンが2018年に公演した作品で、ミノタウロスの伝説がモチーフ。迷宮に閉じこめられた弟を蜘蛛姿の姉アリアドネが脱出させるという物語だった*1。
なるほどテセウス神話では敵と味方という別キャラクターという印象が強いが、たしかにミノタウロスとアリアドネは姉弟ともいえる。糸を与えて勇者の迷宮脱出を助けたことも、ラ・マシンを代表する蜘蛛型ロボットと符合する。
最後はまた中国から、スマホなどの個人情報流通や、信用スコアにもとづく監視国家ぶりを紹介する。
基本的には監視による不安と、信用による利便の両極を紹介する、以前にも紹介されたようなドキュメンタリにとどまる。
実際は日本でもTSUTAYAによるビッグデータ収集が以前に問題視されていたし、数年前にYAHOO!がスコアを導入しようとしてすぐ終了したこともあった。
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レンタルにおけるデポジットが一般的な中国では信用スコアが利便性を助けたが、それが不要な日本では利便性をもたらさないこと。日本ではクレジットカードが先に普及していて他の決済手段を導入する必要がないこと。
そうした社会の違いがたまたま導入を弱めているのであって、日本が監視国家にならない特殊事情があるわけではない。リクナビが内定辞退率を企業に販売していた事件のように、社会問題に発展した事例もすでにある。
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もちろんウイグル自治区における少数民族弾圧など、監視システムが強権国家の問題を増大していることも間違いない。しかしそれもイギリスなどで先行している出来事でもある。この番組でも無賃乗車の発覚で似たような問題を感じたものだ。
hokke-ookami.hatenablog.com
*1:同年にねとらぼが紹介する記事は、ミノタウロスとアリアドネが戦う物語と説明されている。謎だ。 nlab.itmedia.co.jp