地球での戦闘にミオリネが巻きこまれたが、地球寮は身動きができないでいた。真実をあばくため宇宙へもどったグエルに対して、シャディクはついに正面から戦場に出て、拘束していたノレアたちを解放させるが……
絵コンテで京田知己と小林寛にくわえて、寺岡巌が初参加。コロニーの内と外が戦場となり、それぞれで複数の機体がぶつかりあうモビルスーツ戦をよくさばいていた。主人公スレッタおよび主人公機エアリアルが参加しないことで戦況が適度に泥臭く、拮抗して推移することで緊張感がある。
ただ、モビルスーツが温室を破壊した場面は全景1カットですまさず、トマトが散乱してつぶれているクローズアップカットも入れてほしかった。描きべきことが多すぎて余裕がないのか。
物語については、これまで暗躍していたシャディクがただ一度の敗北で終わるだけでなく、ばらまいてきた多くの火種があっさり消されたことに驚いたし、それでいて納得感もあった。ドラマを積みかさねてきたグエルだけでなく、プロフェッショナルな大人にもシャディクたちは勝てない。
シリーズで似たキャラクターのシャア・アズナブルやフル・フロンタルやマクギリス・ファリドより巧妙に動きながら、たった一度の実戦で少数の配下全員もふくめて生きたまま逮捕。ひろってくれた家の資産を利用して暴れまわったが、しょせん子供たちの反抗でしかなかったことが実感できる。
個人的な復讐心などではなく、それなりに社会的な切実さ*1をもっていた抵抗がミオリネへの執着という個人的な感情で破綻したという意味で、シャア・アズナブルの反転ともいえる。個人の感情に目ざめながら戦ったことが敗北につながったことはテロリストになるしかなかったノレアという少女も同じだ。
一方、生身のまま逃げつづけたスレッタはいくつものものを失ったが、結末において心折れることなく動きつづける。おそらくこの作品のクライマックスにあたる戦闘でありながら、前回*2はもちろんシリーズのなかでも死傷者はあまり出ていない。しかし人々を救うべきだと多くの登場人物が考えて行動し、命の価値が高い物語にすることで、むしろ失われた命の重みが感じられたことが良かった。
*1:しかし視聴者の反応を見ていると、2期に入って地球の状況をくりかえし描いてきたのに、シャディクが地球側に立っていることがあまりつたわっていない問題を感じている。シャディクが地球のひどい状況を実体験するようなエピソードが必要だったのかもしれない。