法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第16話 罪過の輪

 ベネリットグループは次期総裁を選ぼうと動き出す。一方、さまざまな事件で閑散としてきたアスティカシア学園にグエル・ジェタークが帰還。


 ひさしぶりの大河内一楼シリーズ構成の脚本。絵コンテは京田知己と金澤洪充が共同でつとめている。
 今話は他でも、エラン5号がエアリアルの奪取失敗をきっかけに反抗したり、主人公たちを裏切ってきたニカが妥協しつづける信念を見せたり、これまで人間関係の爆弾として配置されていた問題が表面化して、キャラクターの違った側面を浮かびあがらせる。決定的な破綻にはいたらず情報整理しかおこなわれていないが、だからこそ適度に刺激と安心感があるキャラクタードラマが楽しめた。
 そして終盤、ようやくミオリネがスレッタに向きあい、失望する。「逃げたらひとつ、進めばふたつ」と母の受け売りで行動してきたスレッタこそが一歩も進めていないことに。1期の結末のつづきを2期5話まで引っぱった構成そのものが、スレッタの停滞ぶりを強調している。良くも悪くも流されて帰ってきただけのグエルのほうがまだ変化はある。


 2期になって初めて戦闘らしい戦闘はなし。ただしデモ鎮圧のためモビルスーツがつかわれて携行武器で反撃される一幕を挿入したり、アスティカシア学園を警備のためモビルスーツが歩きまわったり、エラン5号がエアリアルを奪おうとしたりと、世界観をうつす背景としても物語のマクガフィンとしてもモビルスーツに存在感がある。1クール目での戦闘がない回と比べれば、きちんと巨大ロボットアニメとして成立していた。
 生徒の消えたさびしい空間を真俯瞰で表現したり、デモの密度や参加する群衆の個性が日本のアニメとしては違和感が少なかったり、たぶん前半は京田コンテの良さが出ている。いわゆるリアルロボットアニメで世相をうつそうとするアニメは、もはやガンダム以外では珍しい。