美少女ゲームを原作とする2008年のTVアニメ。監督は橘秀樹でシリーズ構成は花田十輝。
閉塞感ある田舎を舞台としたゲーム原作TVアニメとして、ポスト『ひぐらしのなく頃に』にしてプレ『ヨスガノソラ』といったところか。
DVDで視聴したが、全編ワイドサイズで制作されており、線が少ないなりにハイビジョンTVの視聴に耐える。シワの入れ方が絶妙にフェティッシュなのがいいのだろう。水着回のシワが特に目を引いた。アニメーションとしては第10話クライマックスのリンチが、ちゃんと体重を感じさせて良い。
しかし第1話で印象的だった主人公の盲目設定が第2話以降にあっさり捨てられ、村八分にされた少女を救う話が続いたかと思ったら、終盤で実はずっと盲目だったと明かされるとは……そういう叙述トリック的な描写も想定しながら視聴する者としては、「はまじ」の性別を主人公が知る場面など、視覚がないと成立しない描写が多くて納得しづらい。このオチに向けて作るなら、もっと納得できるよう全話にわたって整合性に気を配ってほしかった。
とはいえ、美少女ゲームの主人公が基本的にユーザーの視点の役割で傍観者になりがちなところから、実際は村八分にされていたヒロインのひとりこそが物語を動かしうる主人公なのだと少年と立場を逆転したところは面白かった。その終盤にいたると少年は幼児退行してヒロインの庇護対象に後退する。そこから最終話のBパートで母の死にかかわる真相が示唆され、少年が主人公格に戻って話を閉じるという小技も悪くはない。