法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『探偵はBARにいる3』

助手の後輩の青年に依頼されて、ススキノを拠点とする私立探偵は消えた恋人をさがすことに。その恋人が所属していたモデル事務所は売春組織の隠れ蓑らしいが、探偵はモデル事務所をひきいる女性に見おぼえがあった……


東直己の探偵小説を2017年に映画化したシリーズ3作目で、現時点で最新作。肩すかしながら助手との別離を描いたことで、完結した雰囲気もきちんとある。

映画1作目*1は原作2作目を映像化したものらしく、この映画3作目でようやく原作1作目の要素が映像化されたという。ただし人間関係の変化など、あくまで映画では最新の時系列。


まず冒頭で、停電の暗闇に乗じてホステスにセクハラをはたらいた男を主人公の便利屋がかすかな手がかりから追及する。最低シチュエーションのシャーロックホームズで笑った。このシリーズの下ネタ多用は好きではないが、ホステス相手でも合意なく胸をもめば罪だときちんと示すところが現代ハードボイルドとして意義がある。
そして基本的にヤクザな世界で搾取される女性たちの反抗が描かれるわけだが、そこにミステリの古典的すぎるほど古典的なトリックをくみこんでいることが面白かった。観客も劇中人物も予想の範囲内だろうし、だからかトリックは中盤で解明されるわけだが、そういう安易なトリックを選ぶくらい犯人が愚かで急いでいたドラマにつながることもあって、違和感なく楽しめた。他にもいくつか古典的なトリックをつかっているが、しっかり調べる余裕がない状況で時間稼ぎのように準備されたものなので、それなりの説得力はある。


映像面では、世界だけでなく日本でも進歩しつづけるアクション演出にすっかりとりのこされているが、やはり田舎の泥臭いヤクザと便利屋の戦いと思えば許せるくらいの見ごたえはあった。高所からの転落も、群衆に押し流されるなかの乱闘も、日本映画としては手間がかかっている。あっさりした銃撃と全体的な流血の自然さも良かった。ただテンポの良さで楽しませるライトな映画シリーズなのに、中盤のアクションの1カットスローモーションが長すぎたのは疑問。同じ1カットでも速度を変えてメリハリをつけてほしい。
あと、助手のライバル的なチンピラがホストっぽい風貌なのを見て、ホスト探偵みたいなネタも面白いかもしれないな、と逆に思った。ヤンキー出身で、言動がアゲアゲで軽い感じのキャラクターが名推理を披露すれば落差で映えそうだし、警察にたよれない状況が多ければ私的な探偵が活躍できる余地がある。