出産が近い女を残して、借りた高級車で去っていった男。
高級車を貸した教師がつとめる学校へ、探偵があらわれる。探偵は教師の同級生だといい、高級車で去っていった男の消息をさがすため、協力をたのみこむ。どうやら男と探偵はヤクザにかかわっていたらしいのだが……
2008年の内田けんじ監督作品。オリジナル脚本のトリッキーさが凄いと聞いていた。そこで視聴してみると、監督が脚本も手がけているおかげか、異様な構成を支えるため細部まで気が配られていることに感心した。
物語のポイントは、とあるトリックと、どんでん返し。とあるトリックを小規模映画で展開していることそのものに個性があって凄いが、あくまでどんでん返しを支えるための基礎。トリックが明かされた後も、どんでん返しが映画という表現媒体を象徴するような情景と状況を新たに生んでおり、最後まで楽しむことができた。
事件の真相が台詞で明かされる場面や、計画全体の真相はコメディのようなリアリティだが、舞台の特異さと俳優の演技のおかげで、それなりに見ていられた。
ただ、かなりゆるい雰囲気の作品で、序盤は群像劇のように視点が細かく動くから、体調の問題もあって眠気をさそわれた場面もあった。
状況が変転しつづけていくのでつまらないことはなかったが、去っていった男の不在をもっとコメディなりに強調していれば、前半も興味を強く引きつづけられたろうし、どんでん返しの意外性も増しただろうとは感じた。