「いらすとや」の画像を素材にして漫画形式で自己流のミステリのつくりかたを説明しているのだが、2番目のツイートでいきなり首をかしげてしまった。
「ミステリで大事なのは人間ドラマでトリックは付属物」初心者でも書ける推理小説講座がミステリ界隈で炎上 - Togetter
このツイートは、たとえば犯人視点の倒叙ミステリや、主人公と名探偵が同一人物というパターンを無視している。複数視点で事件を追って全体像が見えていくパターンへの応用もできない。
『刑事コロンボ』に代表される倒叙ミステリは、主人公の犯人と対立する名探偵のふたりだけでも成立する。名探偵に追いつめられる恐怖を描く物語において、平凡な脇役の迷推理はノイズになりがちだ。
名探偵が読者と同じ視点で情報を集めていき、読者より少しずつ先に論理を組み立てるパターンは、事件と推理が同時進行することでサスペンスがとぎれない利点がある。名探偵が事件を止められないことに不自然さがないので、連続殺人事件などにも向いている。真相に気づいた瞬間の感情も共有しやすい。
そもそも名探偵と助手とでキャラクターの知能を偏らせる手法は、一方のキャラクターを下げることになりがちだ。一次創作ならまだいいが、Gyo_ree氏の書いている二次創作では好まれにくい手法ではないだろうか*1。
つづく3番目のツイートも、事件に対する思想で名探偵と助手が対立して終わるパターンや、名探偵か助手のどちらかが真犯人というパターンを無視して成立している。
むしろGyo_ree氏のツイートは、4番目からはじまるトリックの作成方法こそが実践的だと思った。
根幹トリックを補完する偽装工作をリスト化していって、その偽装工作の粗をつぶすようにリスト化していくのは、かなり使える手法だろう。さらに偽装を犯人だけがおこなうのではなく、被害者や第三者の行動と組みあわせていくと、さらに発展性が生まれるし、囮にとどまらない存在意義がキャラクターに生まれる。
根幹のトリックはシンプルで良くて、その偽装や解明でアレンジしていくというのも、わりとモダンな本格ミステリの傾向だと思える。
*1:私自身、ミステリ的なプロットを組みこんだ二次創作では、主人公自身が失敗をくりかえしながら真相に近づいていく手法を選ぶことが多い。