法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『GANTZ:O』

 駅で通り魔にたちむかった青年が、刺された後に見知らぬアパートの一室で覚醒する。そこには謎の黒い球体があり、ガンツと呼ばれていた。青年は生き返ってたったひとりの家族に再会するため、ガンツの指示するサバイバルゲームを仲間とともに始めるが……


 2016年の3DCGアニメ。TVアニメや実写映画にもなった奥浩哉の漫画を、さとうけいいち総監督でデジタルフロンティアが映画化。原作の大阪エピソードを抽出して、ひとつの物語にまとめている。

 物語は完全にデスゲーム物の中盤をとりだしただけの作りだが、初参加の主人公に周囲が説明することで設定が追いやすい。次々に異常や危機が起きるなかで説明を求めるので、だらだら解説するだけの緊張感がない場面も存在しない。
 観客に開示したルールを最大限に活用しつつ意外性も足して、はてしなく戦いがつづくオチでありながらドラマとして納得感のある結末に落としこんだことも感心した。原作からの抽出とわずかな改変が見事。
 強力な大阪チームのトップ三人が傲慢なだけではない実力の違いを見せたり、現世で超常的なゲームがおこなわれることで乱入した自衛隊により怪物やアイテムの強力さを実感させたことも、デスゲーム物に必要な段取りを必要充分にやっている。


 映像は完全に3DCGで構成されているが、手描き作画のアクションアニメで卓越したアニメーターの寺岡巌や橋本敬史らが絵コンテとして参加。どのパートを誰が担当しているのかはわからないが、2Dアニメでは難しいカメラワークでいて、けして見づらくない映像で構成されていることに感心した。
 原作は部分的にしか読んでいないが、過去の映像化と比べて主観視点の多用も印象的。特にアパートの一室まわりの転送描写と、物陰に隠れて怪物たちを見るカットは出色だった。そうした難しいカットを成立させるにあたって3DCGの正確なパースが効果をあげているのだろうし、同時にカメラをなめさせるオブジェクトをていねいに用意する手間のかけかたもリソースのわりふりとして正解。


 日本の3DCG作品としては、頭部が露出している原作デザインのスーツから逃げずに、老若男女の多様な頭髪を自然に表現していることも良かった。
 同じさとうけいいち総監督が2014年に東映でつくった『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』の長髪は不自然で途中から短髪になるくらいだったし、別スタッフの『アップルシード アルファ』は最初から短髪キャラクターばかり。ようやく日本でもCG毛髪が自然に表現できるようになったのだと実感できた。
hokke-ookami.hatenablog.com
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 大阪の道頓堀を中心とした、適度に狭くも立体的な舞台でのアクションも先述のようにそつなく見せ切っている。もう少し手間をかければそのまま実写作品のVFXにもつかえそう。集団戦も巨大な敵に罠をかける戦いも、巨大ロボットをつかったような怪獣映画のようなアクションまで楽しめた。