法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』サハラ砂漠で勉強はできない/ニニンジャ!からくり忍者屋敷

そういえば先週にED前に次回予告が流れたが、またED後にもどった。先週はラストに宣伝を流すための特別か。


サハラ砂漠で勉強はできない」は、連休でなまけているのび太が、スネ夫のように別荘の良い環境なら宿題ができると主張する。そこでドラえもんは遠くの景色をもってくる秘密道具を出すが……
2013年にアニメ化*1された中期原作をリメイク。脚本は清水東で、コンテは佐野隆史。
先々週の新監督コンテによるスペシャルで今後の演出スタイルが過剰にならないか懸念していたが*2、逆に秘密道具「環境ビジョン」の動作で下手な演出をいっさい入れない。キャラクターの背景がスライドしたり切りかわる異化効果を素材のまま味わえる。3DCGを活用するリソースはなくても、素材を個別に拡大縮小しやすいデジタル撮影の恩恵にあずかり、いかにもセルアニメ*3らしいキャラクターと背景の分離をシュールな描写に昇華できていた。景色をさがす描写をgoogle地図をタブレットで見るようにしたのも、これ見よがしではなくて良かった。
内容は原作にかなり忠実。ところどころアニメオリジナルで努力を実らせていた2013年版より、思い出したような努力すら無駄のまま終わる原作のドライさが残っている。スネ夫は笑われるだけだし、のび太たちは遭難者の役に立たないまま終わる。
もちろん原作そのままでは描写が足りないので*4、類似した短編「環境スクリーンで勉強バリバリ」の景色や、アニメオリジナルの景色を足している。2013年版と同じく出木杉の宿題をのぞこうとするし*5、遭難者を助けようとして出す秘密道具も増やして、のび太ドラえもんのダメダメさを強調する。自室にいるまま自宅の庭の景色になるシーンなどは、視聴者としても見なれた風景だからこそ異化効果が強烈だ。雄大な夕陽のサバンナのように、時差を意識した描写にも感心した。
ただひとつ残念だったのが、「環境スクリーンで勉強バリバリ」から引いたナイアガラの滝を、現代でも雄大な自然のように描写していること。国立公園だがカナダと米国の国境にあるので開発されており、中洲の島には広々とした駐車場があるし、周囲に複数の高層ビルがあるので嫌でも目に入る。自然を見せたいならビクトリアの滝にするべきだろうし、ナイアガラの滝なら開発ぶりに落胆するギャグにするべきだろう。


「ニニンジャ!からくり忍者屋敷」は2018年の再放送。当時も感心できないアニメオリジナルストーリーだったが、いかにも子供向けな細かいギャグが入るのも好みではない……
hokke-ookami.hatenablog.com

*1:感想で言及はしていないが、実写後日談のアニメ映画『ぼくらの7日間戦争』を監督した村野佑太のコンテ。 hokke-ookami.hatenablog.com

*2:hokke-ookami.hatenablog.com

*3:厳密にはセルロイドを使用する商業アニメは消えている。ここでは動かさないかわりに書きこんだ背景と、別スタッフが共同で質感を統一しつつ動かすためアニメ塗りしたキャラクターという、撮影素材をレイヤーで組みあわせる手法をいう。デジタル撮影ではレイヤーごとに拡大縮小を変えられるので、疑似的に奥への移動を表現できる。

*4:ただ今回は景色を変えて楽しませるエピソードなので、いずれ原作から描写を足し引きせず景色を長く映すようなアニメ化がされるかもしれない。

*5:原作や2013年版では自室でスリップ一枚だったしずちゃんが、薄着のショートパンツで水をはったタライへ足をつっこんでいる描写へ改変。いずれエアコンの普及度が増せば、また変わっていく描写だろう。