法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ママをつかまえろ!/四次元くずかご

「母の日直前!」として、野比玉子を家族でいたわろうとするアニメオリジナルストーリーが放映。


「ママをつかまえろ!」は、のび太は母の日だからとママに願いをたずね、肉体を交換する秘密道具で子供のころのように遊ばせてやる。しかし闖入してきたドラ猫のため、事態がこんがらがって……
肉体を交換する秘密道具はいくつかあるが、今回の「トッカエバー」は原作からして家族の苦労を知る物語だった*1。地味に原作の文脈を考慮した選択といえるだろう。
まずママの姿で家事をするのび太たちの奮闘がほほえましい。ドラえもんが洗濯物を干すため踏み台を使うシークエンスが地味によくて、ドラ猫を追いかける場面ですっころぶ原因として画面外に配置しているコンテがうまい。のび太の姿をしたママがスポーツで大活躍する光景もギャップが楽しい。のび太の身体能力そのものは悪くなく、精神的な問題が強いのではないかと感じさせる。
後半からは、ママの肉体になったドラ猫を追いかける追跡劇が展開される。完全に猫としてふるまい、町内を驚かせるママの姿がスラップスティックとして楽しい。それを追うドラ猫姿ののび太もかわいい。そうして母の日からいったん物語の主軸が外れながら、パパの助けにつなげて母の日に回帰して終わるオチもよくできている。
ただひとつ、パパが手伝う家事がママに茶を入れてやることだけなのは、前時代的すぎるかな。もともと家事が下手すぎて家族に止められるようなキャラクターなので、原作を逸脱しないためにはしかたない描写とも思うが。


「四次元くずかご」は、しずちゃんが高井山へ行きたいというので、のび太がかなえようとする。ドラえもんが留守で、スペアポケットも入手できず、廃道具から使えそうな物を出していくが……
原作短編から素直にアニメ化したもので、しずちゃんはひどい目にあうだけだが、いずれ母になる女性を助けるエピソードといえなくもない。物語としては忠実に原作を映像化しており、期待に応えるが超えないくらいの出来。アレンジは結末の描写で山向こうにドラえもんがいる情景を足したり、食べ物が不味い理由として食材のシャッフルという説明を足したくらい。
ただ、あらためてアニメで見ると、序盤の出木杉が本筋にからまない構成がもったいない。ドラえもんが高井山へ探しにきた背景として、出木杉に教えてもらったという説明をアニメオリジナルで入れても良かったかもしれない。