法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『名探偵プリキュア!』第11話 キュアアルカナ・シャドウ、現る

 宝生美術館の館長が部屋にいる時、どこからともなく怪盗団ファントムの予告状が飛んでくる。星明かりのプリンセスという首飾りを盗むと予告するそれは、森亜るるかが送ったものだった。
 予告状があったことを報道で知って、明智と小林は美術館に押しかけ、名探偵として事件を解決すると売りこむ。館長は完璧なセキュリティを誇りつつ、明智と小林の自由にさせるが……


 村山功シリーズ構成ひさびさの脚本。キュアアルカナ・シャドウの華々しい初変身を、二重三重の意図を隠した森亜の策略と、今作初の藤原未来夫作画監督の美麗な作画で飾った。
 演出の重矢葉月は東映に入って『ゲゲゲの鬼太郎』6期から仕事をはじめた若手演出家らしいが*1、すでに『恋するワンピース』でシリーズディレクターも経験している。特に奇をてらった構図や隠喩などは印象に残らなかったが、特に位置関係がわかりづらいところもなく、そつなく美麗な絵を処理できていたと思う。
 物語もさすがに力が入っている。キュアアルカナ・シャドウを初登場で負けさせられないからとアゲセーヌが漁夫の利をえようとしてプリキュアに勝たせてしまうご都合主義は、先にマスコットに占いをさせて前振りをしているので許容できる。怪盗団の良き先輩であったゴウエモンが森亜をフォローし、森亜が実際には失敗していないと描くことで、キャラクターの格がどちらも落ちない。


 ミステリとしては、偽物とすりかえたと騙して鍵を開けさせるのは森亜自身が語るように古臭いパターンだし、名探偵が真相に気づいて羽根が舞う演出もなく、森亜が逃げた先に明智たちが気づくのは根拠薄弱だが、盗まれた首飾りの虚実から盗んだ動機という事件の根幹をひっくりかえすことで短編ミステリ的な面白味があった。
 そもそも館長がひとりでいる時に予告状を飛ばせるような超常的な能力があるなら、予告状で罠をしかけなくても盗む手段はいくらでもあるのではないかと引っかかっていたが、美術館に注目をあつめて隠された嘘を白日のもとにさらすことが真の目的だったわけだ。
 偽物であっても人々をひきつけて「マコトジュエル」が生まれることが描かれたことで、社会がフェイクにも価値を見いだしてしまうという問題提起が生まれ、フェイクと戦うという名探偵側のテーマとの葛藤も生まれる。
 むしろミステリとしての筋は良くても探偵ミステリ的なフォーマットを崩していることで、この面白味が大人の視聴者にも通じないかもしれないところが気にかかった。こういう真相が明らかになることで世界の見え方が変わるところこそ、ミステリというジャンルの良さなのだが。

*1: