法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『北京原人の逆襲』

 ヒマラヤ奥地の小さな村に大地震が起き、呼応するように超巨大な猿人が姿をあらわす。それを捕獲して見世物にしようと、香港で組織された探検隊が現地を訪れる。そこでは飛行機事故でひとり生き残った娘が成長し、巨大な猿人とともに生活していた……


 ギラーミン製作のリメイク版『キングコング』に触発され、日本の特撮スタッフをまねいた1977年の香港映画。プライムビデオで会員向け見放題配信されていた。

北京原人の逆襲

北京原人の逆襲

  • ダニー・リー
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 香港の映画制作会社ショウブラザーズが日本の特撮スタッフをまねき、横長の「ショウスコープ」で巨大なミニチュアセットを見せていく。
 当時の香港の街並みを再現したセットがすごいと聞いていたが、冒頭から小さな村の地割れ特撮が楽しめるとは思わなかった。山岳の森林のなかで北京原人が登場する前半も、起伏ある地形に木々や岩をカメラがなめて北京原人を映すので、映像に厚みと奥行きがある。
 一方で期待の建物ミニチュアの細部のディテールは粗く、自動車の模型はエッジが丸くてオモチャ丸出しだったりするが、巨大でいて生活感あるビルの谷間を着ぐるみの北京原人が歩く構図や、大胆なスクリーンプロセスをつかった群集との対比など、アナログ特撮の魅力に満ちている。
 演出ではクライマックスのカメラワークがいい。香港最高峰のビルの屋上に追いつめられた北京原人を、まわりこむように映すヘリコプター視点。眼下の夜景や遠くの山並みが適度に映りこんで、巨大感と情感がある。他にはミニチュアセットの移動撮影をスクリーンに投影し、人間が顔を出した戦闘車両が進むという大胆なスクリーンプロセスもパースは滅茶苦茶だが、それゆえのアニメ的な良さがあった。
 尺は1時間半に満たないが、エンドロールがないので、本編の尺自体は一般的な娯楽映画と同じくらい。ホリゾントが近くて舞台のようだが、そこそこ大きなスタジオセットもいくつかあって、大作映画を見ている気分にはなれた。


 ミニチュア特撮以外では、前半の冒険パートで暴走したゾウの群れを射殺する描写があったり、生きたヒョウやトラやヘビを俳優とからめて撮影したり、いかにも当時の香港映画らしい乱暴な場面が多い。
 しかし血糊は全体的に明るく、北京原人に踏まれたり高所から落とされた人間は流血しなかったりして、暴力的な内容のわりに映像は陰惨ではない。露出度の高い美女をメインヒロインにして、他の女性もふくめて情事や性暴力がいくつも描写されるが、乳首だけは映らないように工夫したりして、低年齢の子供にもギリギリ安心して見せられそうなレベルに抑えている。
 巨大怪獣を見世物にするため文明社会につれてくるストーリーラインは『キングコング』そのままで新鮮味はないが、メインヒロインのアウェイをターザンのような設定にして、北京原人に育てられた設定にしているところが意外とうまい。北京原人がアウェイを気にかけて追いかけ、見世物にもなる展開の説得力が原典よりあるし、興行主がアウェイをレイプしようとしたのを見て暴れはじめるので北京原人への嫌悪感がわかない。怪獣にヒロイン側が同情する描写も不自然にならない。