法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジャイアンが警察官!?/スネ夫の自慢はみんなの自慢

前後ともアニメオリジナルで、今年最初の放映なのに正月らしさはあまりない。放映がずれこんだりしたのだろうか。


ジャイアンが警察官!?」はスネ夫自慢の大型テレビで警察官ドラマを楽しむ。のび太たちは警察官にあこがれをもつようになり、交番の巡査を実地体験できる秘密道具をドラえもんに出してもらうが……
ひさしぶりの寺本幸代コンテ演出回。冒頭のグリグリ動くTVドラマのアクション作画がフォルムもふくめて目を引く。ただ派手な映像で目を引く導入にしただけではなく、本編でドラえもんジャイアンからホワイトボードを奪取した場面でリフレインして印象を強める。
子供たちがとろうとする柿の実をセル画調にせず、背景美術にとけこませつつピントを果実にだけあわせて埋没をさけるテクニックもおもしろい。秘密道具として出した交番のスケール感をちょっとしたカメラワークや俯瞰のロングショットで表現しているところは顕実な良さ。
物語は、単純に子供たちが警官にあこがれるだけなら公権力のプロパガンダになりかねないが、ジャイアンが悪徳警官になることで、警官でも悪いことをすれば犯罪になるとドラえもんに明言させる。
もちろん警察権力そのものは否定しないが、これこそ正しく教育的といっていい。それがジャイアンという脅威へどのように対処するかというサスペンスアクションとして楽しませもする。


スネ夫の自慢はみんなの自慢」は、のび太がすき焼きを楽しんだことで周囲をうらやましがらせたが、スネ夫にとっては高級食材のすき焼きすら普通だった。のび太ドラえもんに泣きつくが……
諸橋隼人脚本、八木郁乃コンテのアニメオリジナルストーリー。ひょんなことから秘密道具「コウヘイカ」をつかって、他人の優遇不遇が周囲にも適用されていく。
最初はスネ夫の境遇にあわせて周囲も幸福になっていくわけだが、スネ夫自身は「おすそわけガム」などと違って幸運が削られていくわけではない。しかし周囲との相対的な評価でおぼえる幸福が消えることで、精神が陰々滅々となっていく。
公平になることで不遇でなくても不公平と思いこんで不遇感をおぼえる富裕層の身勝手な心情ではあるが、スネ夫は周囲に攻撃的にならないことで、逆に調子にのっていたのび太を巻きこんでいく。
原作でよくある上げて下げるプロットで、特に意外性も新鮮味もなかったが、標準的なつくりではないだろうか。