法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1話 魔女と花嫁

宇宙空間に浮かぶ学校へ、スレッタという少女が水星から転入してきた。そこでスレッタは学校内で巨大ロボットをつかった決闘がおこなわれ、さまざまな物事が決められていることを知る。
スレッタは転入直前に救助するつもりで意思を無視してしまった少女ミオリネから、逆に決闘時に命を救われる。スレッタはミオリネに責任をはたそうとついていくが……


先週放送のPROLOGUE*1につづいて小林寛監督のコンテに、大河内一楼シリーズ構成の脚本。世界設定や人間関係の説明をしつつ、学園の子供たちの葛藤と大人たちの政争を二重構造で描きつつ、ガンダムの活躍を多重に描ききったことに感心した。
技術や状況などの設定は、さまざまなサブキャラクターの一言を挿入するかたちで必要充分に説明。脚本主導の台詞で動く物語というわけでもなく、まったく台詞がなくコロニーの風景を静かに映しつづける余裕もある。
各決闘の展開も良かった。まず現ホルダーが圧勝する決闘を描いて、ミオリネが搭乗したガンダムは性能をひきだせずに負けて、途中でスレッタが交代して圧勝する。機体と人間の強さを物語の段取りで示せているし、単純にロボットアニメとしての見せ場の多さも嬉しい。
対比構造もわかりやすい。スレッタが無邪気にガンダムで敵を殺して終わったPROLOGUEと対比するように、スレッタが必死に人を助けて始まる本編。今回に倒す決闘のホルダーは陳腐なまでに傲慢な男で、無機質な弟と対比される。さらにスレッタはガンダムで勝利することで何も知らないまま、母の仇と思われる男の命を救う。スレッタと最初に出会ったミオリネの、責任をとれという要求が、文字通りでかなったオチもいい。
ただひとつ、スレッタが初めて見る決闘が周囲を巻きこみかねない危険なものだったのは物語の都合を感じないでもなかった。しかしシリーズの過去作品と比べて特に不自然なほどではない。これまでのシリーズを見てきた視聴者ならば許せそうなラインはこえていたと思う。


すでに話題になっているように、決闘で花嫁をうばいあうシチュエーションは1997年のTVアニメ『少女革命ウテナ』を思わせるが、スタッフの強いつながりはない。せいぜい大河内一楼が脚本家になる以前にノベライズをおこなっただけ。
どちらかといえば『少女革命ウテナ』とメインスタッフが共通つつ、今作と同じMBS製作で同じ放送枠のロボットアニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』との類似性で考えるべきかもしれない。閉ざされた学園で巨大ロボットで決闘するシチュエーションや、巨大ロボットの登場演出などが似ている。

直接的に共通するスタッフはいないが別作品を経由した関係があるといえば、数年前にTVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などもあった。いまだ独特の立ち位置にある前世紀の作品が、関係するスタッフの発展作品だけでなく、業界全体に影響が広がって同ジャンルの作品として生みだされる時代になった、と考えるべきかもしれない。