法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『アニメ店長』の断片的な描写から、あたかも蓮舫氏が表現規制派のように受容されている違和感

アニメのソフトやグッズ販売などを手がけるアニメイトの宣伝漫画『アニメ店長』。
www.animate.co.jp
その「マンガアニメのヒーローを学んでしまった副作用」という迷台詞で知られる一頁が、あたかも表現規制の正体であるかのように語るツイートがあった。


表現規制などの圧力の正体はこれです。攻撃しやすいものであれば奴らはなんでもいいんです。
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迷台詞そのものは、良くも悪くも現実の認識が虚構に影響されるという主張だ。逆に、虚構でも有害になりうるという主張にもつながる。
もちろん漫画らしい暴論極論ギャグなのだが、リプライや引用リツイートを見ると、現実に政治家への攻撃にもつながってしまっている。


R4は死刑だな

このような主張は今回が初めてではなく、半年前に表現の自由についてリベラル政党への不信を語る「もへもへ@gerogeroR」氏へのリプライされたりしていた。


ぶっちゃけ今のリベラル政党は「表現の自由」より「フェミニストに味方したほうが見栄えがいいからオタク弾圧してやろ」って判断する連中が多そう(個人の感想)なんで全く信用できないわな。

だってオタクって可愛くないし助けても社会的承認得られないから死んでもいいよねってことやしな。


定番のR4貼っときますね


念のため、蓮舫氏は政治家としてマンガアニメの法規制に抵抗したひとりだ。


10年前「非実在青少年」問題が奇襲的に盛り込まれガチのマンガアニメ規制になりそうだった際、動きの鈍かった都議会民主党の尻叩いて見直しまで持ってった立役者が蓮舫議員であるのって意外と知られてないんだよね。表現規制反対派から彼女は人気なさそうだけどそのことは覚えておいた方がいいと思う。

『マンガ店長』第5巻に収録された当該エピソードは、「非実在青少年」問題から少したった時期に描かれた。

たしか民主党政権時代であり、蓮舫氏が仕分け作業で注目されつつ、まだ閣僚にはなっていなかった時期。
つまり当時の与党の有力政治家をモデルにしたわけで、権力を題材にする実直な風刺といえるだろう。


そして手元に単行本がないため断言しづらいが、そもそも当該エピソードは政治家が表現を規制しようとする内容ではなかった。
むしろアニメの世界的な高評価を認識して、国策的に応援しようとしたエピソードだった記憶がある。
そこで検索して、単行本にまとめられる前にアニメイト宣伝用の小冊子で掲載された時点での感想を見つけた*1
大炎上 | アニメ店長 「日本のアニメは世界一」であるため国家プロジェクトが始動

待ち受けていたのは事業仕分けで有名になったあの女性議員、蘭里舫(らりほう)議員! 会話も何かと仕分け風に「無駄なものなんですね」「それを無駄な物と言うんです!!」と、あの様子そのものなのでビビる兄沢です。

議員は事業仕分けするために来たのではなく意外にも"アニメのため"。
 「日本のマンガアニメは質・量ともに世界一」 この世界一を守り抜いて欲しいとのこと。
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スーパーコンピューターを「(世界)2位じゃだめなんですか」と言っておきながら、更には前総理が模索した「アニメの殿堂」とか「国営マンガ喫茶」案を否定しておいて何故「日本のアニメは世界一」を守り続けなければならないのか?

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「日本は今 狙われている」「それを守れるのはあなたたちアニメ店長だけ」と聞かされては動かないわけにはいきません。

つまり、箱物行政を批判*2しつつも役に立つアニメや漫画は優遇する政治家に対して、反発をおぼえたのが冒頭のアニメ店長だったはずだ。
そういう意味では現在につづく安易なクールジャパン政策への批判とも解釈できるし、アニメや漫画以外を軽視することへの批判を読むこともできる。
念のため、これは読み返していない記憶にもとづく要約なので、実際の文脈と異なる可能性はあるが。


いずれにしても、漫画やアニメの表現規制であるかのように冒頭の一頁を紹介することは間違っている。
モデルになった政治家は現実では表現規制に抵抗していたし、虚構でも「攻撃」が表現規制を指しているとは解釈しづらい。
風刺として蓮舫氏を揶揄するため引用することも自由だが、表現の規制をふせぐ目的にはつかえない。

*1:引用時、文字色変更や太字強調を排した。

*2:国立メディア芸術総合センター自民党内からも批判が多く、施設建設よりも保存や人員拡充に力を入れるべきとされていた。