法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

日本アニメーター・演出協会JAniCAが、参院選で推薦している候補者がかなりひどい

後藤和智*1のツイートを経由して、アニメーターの西井輝美氏が「これはなくないか、ジャニカ」と批判しているツイートを知った。


あまりにも酷すぎる。特に問題なのは赤松よりも小野田。差別発言を多数振りまいている人間を推薦するなど、正気の沙汰か!としか言い様がない。

自民党候補者の赤松健氏、小野田紀美氏、藤末健三氏、立民候補者の栗下善行の、たった4人だけという選択肢のせまさ。
著名な政治家でいえば、せめて福島瑞穂氏や蓮舫氏などもリストに入れるような無難な態度はとれなかったのだろうか。


10年前「非実在青少年」問題が奇襲的に盛り込まれガチのマンガアニメ規制になりそうだった際、動きの鈍かった都議会民主党の尻叩いて見直しまで持ってった立役者が蓮舫議員であるのって意外と知られてないんだよね。表現規制反対派から彼女は人気なさそうだけどそのことは覚えておいた方がいいと思う。

それに古くからアニメ労働現場を国会で提議し、また支援もしてきた共産党はなぜ無視されているのか。
たとえば共産党候補者として出ている山添拓氏などは、インボイス批判をおこなう今年の質疑でアニメーターの労働環境のきびしさに言及したばかりだ。
国会会議録検索システム

私は、フリーランスの方からもお話を伺いました。アニメーター、一日十二時間働いても年収二百万円台が珍しくないと、自分が免税業者だという認識もなく、消費税について学ぶ時間も取れないと、その中で、この先インボイスの事務に時間を取られるのかと心配されていました。


一方で、最初に書かれている赤松氏は、選挙活動においてヒット作を後から優遇する政策案で業界関係者からも批判されたばかりだ。
hokke-ookami.hatenablog.com
待遇改善を目的とした政策案としては「選択と集中」よりもひどく、しかも自由市場に反した格差固定をまねきかねない。
ただ、もともとJAniCAは経営者*2がたちあげた歴史を思い返せば、残念ながら意外性はないともいえる。
事実として、『猫の恩返し』の監督で知られる森田宏幸氏が、「製作企業」にコントロールされているがゆえの限界を元JAniCA理事として指摘し、今回の推薦も批判している。


JAniCAは「業界を良くする」を仕事にする団体なんです。省庁から予算を得たりして。ただし無難な活動だけ。
いざ、本気で制作会社と交渉したり、組織が真に力をつける提案すると潰されます。製作企業のエージェントに頭を取られているからです。
他団体に追随して声明を出すなどは得意な団体


いえいえ。これがJAniCA。私が理事を辞めたあと、山田太郎議員への支持を表明するなど、団体として頼まれもしない、しがらみもない、得もない集票をなぜか買って出ています。あるのは忖度だけでしょう。

他に共産党市議の大隈真一氏は、アニメ制作者の視点からJAniCAへの不信と一定の評価を語りつつ、やはり推薦対象の人選を批判している。


ジャニカが対象とするアニメーター、演出家の皆さんのかなりの方がインボイス制度が実施されれば打撃を受けることになるのに

そんなことも知らせずに「選挙の選択肢にいれてくれ」って

ホントに「協会として大丈夫?」って思う
実態調査とかは一定評価してただけに残念


さらに後藤氏も特筆して批判している小野田氏にいたっては、どのような立場であれ表現者団体が推薦や支持をするべき政治家とは思えない。
たとえばトランプ支持者がつどうSNSがプラットフォームから排除されたことを批判した。その「自由」は他者の権利を暴力的に奪うことを扇動する「自由」にすぎないが。


フェイクニュースを流しそれを既成事実にして世論を形成してきたマスコミに、やっと対抗できるSNSという言論の自由武器が出来たと思っていたら…今回の一連の流れは酷すぎる。私の生まれたアメリカは、自由の国という誇りをドブに捨て去るのか。共産圏になるの?

もっとも小野田氏自身が不正選挙陰謀論に同調してしたこともあるので、死者を出した議事堂選挙も正当な革命のように思えているのかもしれないが。


素敵…

マクナニー報道官に惚れてしまいそう!
マスコミは仕事しろ!

さかのぼって2019年にはオーストリアで開催された美術展覧会へ自民党として介入して、日本大使館への公認を撤回させたこともある*3。直接的に表現の自由にかかわる動きだ。


先程行われた自民党外交部会において、早急な事実確認と、日本を貶めるような事が日本大使館共催で行われている事が事実であれば直ちに是正を求めると共に、類似例の調査も含み問題提起致しました。


それでも米国や外国の展示会への批判的な言及であれば、自国の表現の自由を直接的に阻害しているわけではないと説明できるかもしれない。
しかし、桜を見る会をモチーフにした『バリバラ!』への批判要求に対して、明確に同調したことは明らかに表現の自由への介入といわざるをえない。政府与党の一員であればこそ、政府への風刺は甘受すべきだろう。


「政治家がメディアに圧力をかけた!」と言われる事が容易に想像できますが一言だけ。電波という国民共有の財産を使用し、税金を投入して運営している放送局が、この非常時にこんなもの作る時間があったら、今困っている国民が利用できる制度や申請の方法(全然報道されず)を1秒でも多く流すべきでは?

ぜひ、お時間があったらNHKの公平性を欠いた低俗な番組について、追及して頂けないでしょうか?
https://snjpn.net/archives/192783

そもそもバイラルサイトのシェアニュースジャパンを情報源にしたツイートに同調したこと自体、政治家としてどうなのかと思わざるをえない。
上記ツイートについて「不愉快になったり怒りや絶望を感じる」という心情を根拠に、政治家がつたえることを正当化もしていた。


その番組を見て不愉快になったり怒りや絶望を感じる方もいます。そういう方々から「これは許せない」というお声を沢山頂きました。私達議員がそういう国民の声に共感してその声を伝える事を否定する動きこそ言論弾圧、排除です。表現する事は自由。そしてそれに賛同否定の感想を言うのも自由です。

たしかに心情にもとづく批判的な感想も抗議もまた表現の自由だ。そうした抗議が無視されている時、賛同しなくてもひとつの見解として紹介する政治家もいるだろう。
しかし権力がもった政治家が、政権批判をおこなう民間への抗議に共感して協力するならば、そのまま弾圧につながる危険くらいは念頭におくべきだろう。


NHKへ介入しようとする小野田氏の動きはこの2020年のツイートだけではない。2021年に国会でNHKスクランブル化を求めた時、内容に介入しようとする発言をくりかえした。
国会会議録検索システム

NHKの国際広報の効果検証について、国の予算から海外の広報発信の委託料としてNHKにお金が出ていると思います。

日本の立場をしっかり出すというところなんですが、例えば慰安婦の問題とかで在外邦人の子供さんたちがいじめられていると。要は、日本のスタンス、日本の説明というのがなかなか広がっていかない中で、こういったお金を掛けた広報活動というのは非常に重要なんです。

日本の主張がちゃんと広がっているのかというところを検証しなければこの予算を使うことは意味がないと思うので、是非そこの活動をちゃんとチェックしていただきたいというのを総務大臣にお願いしたいです。

不法行為を行っている人をかばって国が悪いかのような番組を作ったりですとか、どうも日本の印象を悪くするようなことばっかりしている印象が私の中にはあるので、是非これちゃんとチェックしていただきたいし、テレビを見ている方たちもテレビが言っているから本当だと思い込まない方がいいですよ。

政府の一方的な広報機関であることを求め*4、日本国を批判するような番組へのチェックまで求めている。


小野田氏は明らかに表現の敵といわざるをえない。たまたまアニメや漫画に表面的に好意的だからといって、アニメ業界が支持するべき政治家ではない。先述のように赤松氏にも疑問点はあるが、比べるべくもない。
弱い個人が自身を守るため他者を生贄にさしだすようなことがないためにも、業界団体には広い視野と高い目標をもってほしい。それこそが本当に表現を守るために大切なことではないだろうか。

*1:はてなアカウントはid:kgotolibrary

*2:アニメーターや演出家であると同時にスタジオライブの社長でもあった芦田豊雄氏のこと。ただし、経営者が福利厚生のための団体をたちあげること自体が間違いというわけでもない。あくまで労働組合のような機能を期待するべきではないということ。また芦田氏は2010年に公的支援事業をめぐる衝突で辞任している。

*3:bijutsutecho.com

*4:批判的に言及している事例にしても、主張された2014年時点では具体的な事例がいっさいなく、外務省が募集しても見つからなかった。 macska.org 2019年になって外務省の窓口が新たにつくられたが、因果関係が不明瞭なものがリスト化されているようで、いまのところ問題の実在は確認できていないと考えるべきだろう。 www.businessinsider.jp