法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』第30話 大選挙! ローラが生徒会長!?

生徒会長を決める選挙が近いことを知り、ローラは自信たっぷりに立候補。さっそく生徒会室に行くと、意外と白鳥会長は優しく手続きを教えてくれた。
会長になってもトロピカる部をつづけるというローラを見て、担任の桜川は白鳥もテニス部と兼任し、滝沢とダブルスチームで活躍していたと教える。


村山功脚本による、シリーズ恒例となった生徒会長選挙エピソード。
人魚の女王候補を自認して予行演習として立候補するローラと、以前に人魚の秘密をさぐってローラと因縁がある風紀委員の角田正美*1が正面対決する……わけではない。
終始優勢に選挙を戦うのは、現会長白鳥の継承をかかげる副会長の一条里香。副会長が圧倒的なため、他に立候補者が出なかったと風紀委員が語るほど。描写はされなかったが、白鳥がローラの立候補を歓迎したように見えたのは、形式的にも選挙を成立させられることを喜んだためかもしれない。
そうした最初から最後まで無力な……あえていえば認知すらしてもらえない少数野党のような状況で、ローラが自分のあるべき戦いを選んでいくという物語だった。


副会長の前例継承ぶりは徹底していて、街頭演説でも隣に白鳥を立たせて路線継承と発展を語るばかりで具体性がない。それでも学生が集まってくるくらい変化をこばむ学校の状況が悩ましいまでに現代的だ。
ローラとの演説合戦では具体的な数字に言及しだすが、部費を一割あげると目標をたてたらローラは五倍にすると主張したり、とにかく対抗で数字をふくらませるローラの叩き台になるだけ。学生たちは実現性を考えて副会長を支持するとローラに語る。実現できなくても高い理想をかかげる意義を選ばない若者たち。
投票日にいたっては、演説の草稿が描写されたローラや、短いながら台詞のあった風紀委員と違って、副会長の演説は省略される。それでも圧勝したことが事後的に風紀委員から語られる。安易な路線継承をいましめた2年前のエピソードと対照的だ。
『スター☆トゥインクルプリキュア』第35話 ひかるが生徒会長!?キラやば選挙バトル☆ - 法華狼の日記
また、プリキュアとしての戦いを優先して演説を「あとまわし」にしたローラがそのまま失格になった展開は、敵とプリキュアとして戦った後でその敵と選挙をつづけた作品と違って、プリキュア活動が現実の障害になったと感じなくもない。
『スマイルプリキュア!』第37話 れいかの悩み!清き心と清き一票!! - 法華狼の日記
とはいえ、ローラの思いつきの目標をトロピカる部が議論して実現可能な方向に落としこんだ努力が無駄という物語ではないとも思いたい。
いずれローラが女王になるか、そうでなくても近い状況になった時に経験として役立つだろう。それこそが学校が本来もつ機能のひとつだ。


映像面のスタッフは今千秋コンテに稲上晃作画監督。今回は絵柄に古い感じがなく、丸々と可愛い特色はそのままに、かっちりシャープな作画に整えていた。