法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』第12話 没収!アクアポットは校則違反!?

部室で見つけたスケートボードで活動しようとしていたトロピカる部に、いきなり風紀委員が検査にやってくる。人魚が出没するという噂を否定するため、校内を調査しているのだという。しかしローラがうっかり反発して見つかってしまい……


フランシス・カネダとアリス・ナリオが作画監督で、演出の村上貴之などが手直ししているにしても、絵柄に違和感がほとんどない。
風紀委員のスカートがアニメとして少し長めの丈だったり、一見すると普通の制服が風紀委員室に押収されていてローラの変装を助けたり、そんなささいな違和感が最後に丈の長さが校則違反と指摘されたことで伏線として昇華されたのも良かった。
また、スケボーに乗って陸上を移動したり、下半身をロングスカートで隠してヒレの先端に靴をはいてごまかすローラに、チャウ・シンチー監督の映画『人魚姫』を思い出した。

しかし最後にアクアポットが浮遊することでローラは姿を隠して逃げ切るわけだが、さまざまな過去の描写を説明する設定でありつつも、こうなると動きの自由度が高すぎて行動が制限されるからこそのサスペンスを展開しづらくなるのでは、と思った。
小刻みにしか歩けないローラを廊下を走れない風紀委員長が追いかけるシークエンスは映画『ロンドンゾンビ紀行』のようで楽しくはあったのだから、アクアポットの浮遊力も制限を厳しくすれば今後もふくめてサスペンスが維持されたのではないだろうか。


くわえて、後半の展開の伏線とは理解するが、スケートボードを見つけてスケボー部をしようと提案するアバンタイトルに、少し残念な気分になった。
もちろんスケートボードは本来なら最も自由を謳歌するスポーツのひとつであり、本来なら作品テーマと相性は悪くない。今年はじめのTVアニメ『SK∞ エスケーエイト』も一応そのような物語ではあった。
しかし現在のプリキュア東京五輪を応援するキャラクターだ。その競技のひとつを宣伝している文脈として解釈せざるをえない。作品を番組として成立させるための玩具の販売促進とはわけがちがう。
そうして巨大イベントに組みこまれてしまっているスケボー自体の不自由さにも連想がはたらく。公園を共有する市民のひとりとして楽しみながらジェントリフィケーションへ反抗するように権利を拡張していくスポーツであるはずが、利益にならない弱者を排除して資本主義の走狗となっていく現在。