法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『大長編ドラえもん のび太の宇宙小戦争』に登場するドラコルル長官の「約束」ギャグ

軍事クーデターから逃れてきたミニサイズの異星人パピを助けるため、ミニサイズから戻れなくなったドラえもんたちが異星に乗りこむ映画原作。

異星人はワープ技術くらいは持ちつつも、ミニサイズで力は弱い。だから敵も味方も純粋な戦闘力より、政治と知略で戦おうとする。


そして最前線で指揮をとる敵がドラコルル。情報機関PCIAらしい情報分析力で、秘密道具を使ったドラえもんたちの作戦を丸裸にしていく。
togetter.com

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mubou.seesaa.net

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自分自身としずかちゃんを人質交換しようとするパピとの交渉シーン。この時パピは姿を隠し、猫の声帯を借りて喋っています。「きみが一度でも約束を守ったことがあるか?」という皮肉を、さらっと笑って肯定する度量の大きさを見せるドラコルル長官。

部下や上官との軽妙なやりとりもあって、上に紹介した評価のように、有能な悪役として人気が高い。


しかし今回ひさしぶりに見返すと、ちゃんと悪人らしい下種なところも皮肉めいて描かれていることに気づいた。
具体的なひとつが、上記の評価から引用したふたつの場面だ。探査機をしのばせてパピの居場所を見つけた部下に、「昇進を約束しよう」とたたえる67頁。「きみが一度でも約束を守ったことがあるか?」と問うパピに、笑いながら認める90頁。
離れた場面ということもあって気づきにくいが、読み比べると味わい深い。ドラコルルのように有能な悪役は、しばしば逆説的に理想的な上司と解釈されがちだが、しっかり読めば倒すべき敵とわかる描写をされているものだ。