仮想現実ゲームで攻略困難なイベントにいどむ3人のチームがあった。リアルでは仲の良い3人組の女子高生だが、ゲームでは美男美女美少女のトリオ。彼らはゲームを通じてリアルの事件に遭遇する……
メディアミックス企画「.hack」シリーズの一環として作られた2010年のOVA。監督はシリーズ初参加の橘正紀がつとめ、制作したキネマシトラスにとっては初OVA作品となった。
監督には劇場作品として打診されたが、蓋を開けると本編20分のOVAが3話だけで、プロットを削ることになったという。
ネットかリアルか作品ごとに一方を映像化してきたシリーズにおいて、初めてネットとリアルを等分に描いた作品でもある。貞本義行がキャラクターの方向性を決めたシリーズらしくネットゲームアバターは華やかな一方、リアルな少女たちは意識的に地味にデザイン。表情のデフォルメもネット側だけで、ブックレットによるとデフォルメされた表情は作中ゲームの仕様として組みこまれているという。
第1話はネット世界の冒険劇として楽しい。あくまでゲームとして一歩引いて楽しんでいるので、安全なサスペンスが気楽に展開される。超巨大なモンスターと大型チームの戦いを主人公が意図せず邪魔して状況を一変させる前半と、そうして邪魔されたチームが主人公を追いかける『ルパン三世 カリオストロの城』のような舞台の後半で、変化をつけつつアクションが充実。
モンスターなどで3DCGを多用しているが映像として手描き作画になじんでいるし、違う手法で作られたキャラクターを同じ構図に入れこむレイアウトも全体をとおして世界の厚みをつくりだしている。背景を通りすぎる3DCGモブが、きちんとゲームらしい多様な衣装を着せられ、個性をもって動くあたりは現在のアニメも見習って欲しい。
後にキネマシトラスで『ゆゆ式』を監督したかおりが演出を担当していることも注目で、この第1話は作画アニメとしての面白味も強い。
第2話はほとんどリアルで物語が進行し、主人公トリオのうちひとりが意識をうしなって拘束されているので動きも少なめ。
しかし子供なりの謎解きとしては面白かった。ゲームで異変を起こす動機として、とある切実な理由をもってきて、一種のSFミステリとして成立している。
第3話は、大規模な集団戦を横目に、前回に明らかになった背景からさらに違う情報がつけたされ、それを黒幕が知ったことで苦い結末をむかえる。
しかし主人公チームのひとりが話の本筋から脱落したままなのが残念なのと、ネタバラシが長々とした解説で終わったのがアニメとして弱い。前者はオーディオコメンタリーの監督によるとチーム3人を動かす作画の手間が大変でひとりを早々に脱落させた意図が「フィクション」*1として語られていて、悪い意味で納得した。闇堕ちしたキャラクターとして主人公たちと戦う描写をしっかり入れればアニメとしての見せ場にもなったと思うのだが。後者は主人公たちに説明することが自然なシチュエーションをつくっていることと、それを見せる劇中映像の物珍しさはあったが、やはりアクションで期待させたOVAの結末としては期待はずれではある。
集団戦そのものは上空で観察するプレイヤーもふくめてハイレベルに作画で見せられていたし、いったん苦さを噛みしめながらも前向きで涼やかな物語の結論は良かったのだが。

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