法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

私が思い浮かべる「#緊急事態アニメ」といえば『藤子・F・不二雄のSukoshi Fushigi 短編シアター』かなあ

アニメ評論家の藤津亮太氏とジャーナリストのまつもとあつし氏がtwitterで作品をつのり、それを題材に語りあう配信映像を見た。

私はtwitterをやっていないのでハッシュタグは後から知って追うしかなかったが、『未来への虹 ~ぼくのおじさんは、ハンセン病~』等の知らない作品について興味深く読んでいった。


ただ少し残念なのが、藤子F短編のアニメ化シリーズが言及されていなかったこと。災厄によって変容した日常を人々が生きるジャンル作品が多くて、現在に見ればまた新たな発見があるだろう。
『藤子・F・不二雄のSukoshi Fushigi 短編シアター』ミノタウロスの皿/ウルトラ・スーパー・デラックスマン - 法華狼の日記
『藤子・F・不二雄のSukoshi Fushigi 短編シアター』宇宙船製造法/ひとりぼっちの宇宙戦争 - 法華狼の日記
どれもDVD化されず公式配信もされていないようなので、忘れられているのはしかたないのだが、だからこそ改めて公式に視聴しやすい状況にしてほしいという思いがある。
たとえば少年少女の乗る宇宙船が無人星に不時着してサバイバルをくりひろげる『宇宙船製造法』は、ハッシュタグで言及されている『無限のリヴァイアス』の先行作品として楽しめるはずだ。


また、アニメ版の感想は書かなかったが、『みどりの守り神』は1980年代のサンライズで活躍していた滝沢敏文監督がコンテを担当。同アニメ化シリーズでは珍しく濃厚な作画が楽しめた。
その物語は、伝染病により人類文明が崩壊した後、それを知らない男女ふたりがサバイバルするというもの。足を引っぱる女性を合理的な男性が叱咤しながら助けるパターンを、つきはなした視点で描くことで印象を逆転させていく展開が、今読んでも面白い。

f:id:hokke-ookami:20200511212342j:plain
f:id:hokke-ookami:20200511212413j:plain

念のため、上記*1の青年はひとりでイカダを作れるくらい優秀ではあり、いったん激高して置きざりにしながら女性を助けにもどるくらい善良ではある。食料を確保したりして余裕ができれば、激高した問題を自覚して謝罪するくらいの客観性もある。
ただひとつ、おとっている女性をすぐれた男性が救わなければならない、そんな固定観念にとらわれたことが大きな問題だった。そのため無理をきたして意思の疎通もできなくなっていく。それが青年自身を救いから遠ざけていく……

*1:852頁、856頁。