法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ONE PIECE エピソードオブアラバスタ 砂漠の王女と海賊たち 特別編』

TVアニメで展開された本編を、映画として再びアニメ化。どこが今回のTV放映にあわせた新規映像なのかは知らない。


序盤のアクション作画は素晴らしいが、ダイジェストされた展開でキャラクターの感情が変転していくので、ついていくことが難しい。
本編が始まっても、長い連載で描かれた内容を単純に圧縮しただけであり、時系列をずらすなどした脚本の工夫は見当たらない。あくまで原作ファン向けの総集編といったところ。
空間を広く切り取ったロングショットは全体的にいいのだが、アクションシーンの多くはもたついている。これならアクションは思い切って短縮し、序盤のドラマに尺を取るべきだった。ハーモニー調で処理されたストップモーションの多用も、好悪が別れるところだろう。


正直、見ていてだるかったので終盤は睡魔に負けてしまい、ほとんど記憶していない。
尺の問題で圧縮せざるをえないのだから、たとえば最初から最後まで主人公達は砂漠を進んで、アラバスタ王国を目指す経緯は回想で描き、旅路の労苦を感じさせつつ状況説明を並行するくらいの工夫が構成に必要だったろう。
そもそも主人公と仲間のキャラクター性はTVアニメですでに映像化しているのだから思い切って省略し、王女とその周辺のゲストキャラクターにドラマを集中させるべきだった、とも思う。つまり海賊が王女に出会って助ける物語ではなく、王女が海賊に出会って助けを得る物語へ組み替えるべきだった。感情が変化して成長するのは王女の側だけなのだから、視点人物も王女にすれば尺を短縮できたはず。
今村隆寛監督は『デジモン』シリーズでの仕事は素晴らしかったのだが、あまり脚本を練れず演出がひきずられるところが欠点だ。