山本薩夫監督によるモノクロ時代劇。白土三平作品を代表とした、技を持つが権力を持たない忍者を主人公にして、反権力な思想性と娯楽性を両立させた作品群の一つ。
GYAO!で10月3日まで配信。大映の特別企画で配信されているため、いずれ続編も配信されるだろう。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00643/v09583/
この作品はシリーズ2作目なのだが、以前に見た篠田正浩監督版『梟の城』*1とそっくり同じ構成なところが興味深かった。しかも93分という短い尺で、ずっと大きなスケールで安土桃山時代を描いている。
広いセットを使いながら平坦な映像だった『梟の城』に比べ、レイアウトも奥行きがあって素晴らしい。しかもカメラをよく動かしていてカット割りも細かく、それが当時は落ち着きのなさという評価に繋がったらしいが、むしろアクション映画として現代的な評価に耐える。
暗殺を主とする忍者映画ながら、一向一揆を石田三成が制圧する場面などで意外と力を入れた攻城戦も描かれ、合戦映画としても満足のできる出来。ただし服装や髪型は戯画化されており、セットの質感なども軽めで、雰囲気はB級娯楽映画という印象も残った。
物語は、時の権力が移り変わりながらも抑圧され続ける下層階級を、郷や家族を失った忍者を通して描いていく。
織田信長から豊臣秀吉へ権力が移り変わる描写にせわしなさを感じないでもなかったが、待つことで全てを手に入れる徳川家康の存在感が物語をひきしめている。やや時間と場所の移動も激しいが、基本的な展開は誰でも知っている日本史そのままなので、見ていて混乱することはない。
手足を切断するような激しい殺陣もあり、しかも前後して片足を失った忍者の棟梁を生き生きとして描いているため、身体の欠落を陰惨な印象に貶めないところも好感が持てた。
ただ、織田信長の暴君ぶりや、女忍者の演じる愛憎劇など、山本監督らしい人物造形の脂っこさは、やはり苦手だった。