法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

愛知県知事の記者会見をつたえる朝日記事で、地の文で「自画自賛」と表現しているのが興味深い

大村秀章氏の記者会見記事は4人の記者が書いているが、下記で引用した部分は堀川勝元氏が担当しているらしい。
「東京と大阪は医療崩壊」 大村知事、情報公開求める [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

愛知県は入院やクラスター(感染者集団)の状況を日々情報公開しているとし、「こういう対応をしているのは私たちだけだ」と自画自賛

しかし「自画自賛」とは、社説や引用ならともかく、政治家を批判する記事でもあまり見かけない印象がある。


そこでサイト内で単語検索してみると、最近の日本の政治家に対する記事では大村氏くらいしか見当たらない。
「自画自賛」のサイト内検索結果:朝日新聞デジタル
政治家については、少なくとも直近では米国大統領のドナルド・トランプ氏についての記事ばかりならぶ。
自画自賛続けるトランプ氏 死者数はベトナム戦争上回る [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

死者数が8万人を超えた。ベトナム戦争で亡くなった米軍の兵士よりも多い人数だが、トランプ米大統領は「他の国よりも対応が進んでいる」と自画自賛を続けている。

ぎゅうぎゅう詰めから一変、ホワイトハウスの記者会見 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

特に目立つのは、「我々はだれもがなしえていないことを達成した」という自画自賛であり、自分に批判的な報道を「フェイクニュース」と決めつけるメディア攻撃だ。

(世界発2020)トランプ節、非常時でも 攻撃・誇張・自賛、連日の会見:朝日新聞デジタル

繰り返されたのは「だれもなしえていないことを達成した」という発言だ。ニューヨーク・タイムズが会見の発言を分析したところ、自画自賛の発言は約600回あり、多くは誇張や虚偽の事実に基づいていた。

全体的にトランプ氏の観察として「自画自賛」という表現が多用されている。


ひとつだけ、日本政府やマスコミが自画自賛していたという韓国メディアからの引用もあった。
コロナ対応に海外から批判続出 政府、発信力強化に躍起 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

ハンギョレ新聞(電子版)も4月30日に社説で「安倍首相は韓国の防疫の成功を無視し、軽んじていた。日本政府とマスコミは当初、自国の対応を自画自賛した」と批判した。

しかしカギカッコ内に入れた明らかな引用であり、地の文で「分析」として紹介したニューヨーク・タイムズと比べると距離をとっている。
2月までさかのぼり、日本の他の政治家を名指しするかたちで「自画自賛」という表現にたどりつくと、それはやはり社説の表現だった。
(社説)桜を見る会 ごまかし答弁極まれり:朝日新聞デジタル

 首相は施政方針演説の冒頭、第2次政権発足時にあった「日本はもう成長できない」という「諦めの壁」を、7年間の政策により「完全に打ち破ることができた」と自画自賛した。

 一方で、首相自らが「諦めの壁」をつくろうとしているのではないか。

この安倍氏への批判と違って、大村氏の自認に反する情報を記事で指摘して皮肉っていたわけでもない*1


ちなみに、エッセイなどで自身に向けた表現としてつかわれたり、論壇メディアの寄稿記事でつかわれている事例もあった。
(北欧女子オーサの日本探検)茶を点てる 思い込め「私」の一杯、格別!:朝日新聞デジタル

泡が多少粗くても、自分で点てたお茶は格別。自画自賛で味わっていると、竹田さんが正式な茶会「茶事」について教えてくれた。

しかし全体的に見て、今回の大村氏のように会見報道でつかわれているのは、かなり異例という印象を受ける。

*1:たとえば愛知県が患者情報を流出させたことを指摘して、信頼性をむしろ損ねているといった批判につなげれば、記者会見記事に自画自賛という表現をつかっても違和感は軽減されただろう。