法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

軍艦島の歴史的な記述を見ても、やはり日本政府こそが国際的な約束を守る気がないのでは?

産業遺産情報センターを3月31日に開館することを、産経新聞がつたえていた。
www.sankei.com
まず最初に「朝鮮半島出身の犠牲者を記憶にとどめるため」の情報センターだと説明されている。

情報センターの設置は、韓国側の主張を受けた朝鮮半島出身の犠牲者を記憶にとどめるための措置。世界遺産登録への反発を避けるため、日本政府が平成27年に軍艦島を含む登録施設の一部に「意思に反して」連れてこられた朝鮮半島出身者の存在を認め、センターの設置を決めた。

しかし軍艦島などに朝鮮人労働者が強制連行されて重労働をしいられたことは、韓国だけでなく日本の歴史学で認められているし*1、そもそも労働を強制されたという説明は世界遺産登録にかせられた条件だったはずだ。
反論として紹介されているのは、国策の強制問題と末端の人間関係を混同したり、賃金をえていたという奴隷でも珍しくはない逸話ばかり*2

先の大戦中を軍艦島で過ごした在日韓国人2世の鈴木文雄さんが生前語った「周囲の人にいじめられたことはない」とする証言など、元島民36人の証言を順次動画で紹介。

 登録施設の三菱重工業長崎造船所長崎市)で働いた台湾人元徴用工の「給与袋」などの遺品も展示し、日本人以外にも賃金が支払われていたことを示す。


ちなみにセンターを運営する団体は「産業遺産国民会議*3といい、記述の根拠のひとつとして証言を重視したという。

加藤康子専務理事は産経新聞の取材に対し「一次史料や当時を知る証言を重視した。元島民から話を聞いたが、朝鮮人が虐待されたという証言は聞かなかった。判断は見学者の解釈に任せたい」と語った。

以前の方城炭鉱記事もそうだが、日本の歴史的な加害を否認できる場合であれば、産経新聞も証言を頭から疑いはしないようだ。
hokke-ookami.hatenablog.com
また、こうした日本側が歴史を否定する動きについては、下記のハンギョレ記事で端的にまとまっている。
japan.hani.co.kr
今回いきなり日本政府が約束を守るそぶりで踏みにじったのではなく、一貫した行動として今につづいているのだ。

*1:世界遺産の登録までは、「軍艦島世界遺産にする会」の公式サイトでも記述されていた。 hokke-ookami.hatenablog.com

*2:アウシュビッツ強制収容所ですら賃金がしはらわれていたことは以前にも紹介した。 hokke-ookami.hatenablog.com

*3:差別がなかったことを主張したい団体が「国民会議」という名称をつかうことは本当にどうかと思う。