どんな願いでもかなえるというキラキラフルーツをさがして、松野家の六つ子は冒険をくりひろげていた。そして孤島にたどりつき、原住民と出会う。その原住民に助けられた六つ子は、そこで育てられている果実がキラキラフルーツだと思いこもうとする。自分たちで栽培するよう原住民に農機具をわたされる六つ子。そうして六つ子が農作業で苦労する一方、世界では果実をめぐって騒動が起きていた……
2022年に限定公開された日本のアニメ映画。TV3期からつづく映画2作目だが、藤田陽一は原案としてクレジットされ、監督は小高義規に交代。複数のTVアニメで監督をつとめたベテラン演出家だが、映画はこれが初監督のようだ。
いきなりアイテム探ししている六つ子で始まり、映画としてのテンポがいい。登場人物をつきうごかす目的よりも、つき動かされる過程に意味があるタイプの物語。
探しているアイテムの真偽は途中で明確に無視されるようになり、そのアイテムを獲得するための苦労や他者との関係構築にのめりこんでいく。原住民が明確な言葉を発さないおかげで、台詞にたよることなく映像だけでドラマを進行させていく。
1時間超というアニメ映画でも短めの尺だが、失敗と試行錯誤のくりかえしで作中に時間が流れていることを感じさせ、映画らしい空間と時間の広がりがある。さらにクライマックスの争奪戦で大規模なアクションが展開されて娯楽映画としても充実していた。
しかし結末は釈然としない。このタイプの物語でアイテムが何の利益ももたらさないことは定番だが、この真相からすると社会に蔓延して問題をひきおこしていたという説明と齟齬がある。
たとえば社会に疲れた人々は意識的に結末の六つ子と同じ姿になっていっていた、といった説明カットをひとつ入れるだけでも許せたのだが……
