法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』立ちユメぼう/エスパースネ夫

今回の作画監督は前後とも嶋津郁雄。キャラクター設定になった三輪修が作監回では絵柄を出していることと比べて、標準的な印象。


「立ちユメぼう」は、好きな夢を現実に重ねあわせて行動できる秘密道具が登場。それで夢うつつなドラえもんにどら焼きをとられたのび太は、冒険の夢を見ながら街へくりだすが……
仮想現実として夢を描く原作の定番を、夢遊病のように描いたエピソードを、2005年リニューアル後で初のアニメ化。清水東脚本に鳥羽明子コンテ。
剣の横にたたずむ魔法使いというアニメオリジナル描写は、大工か何かかと思いきや、雨合羽を着た釣り人という真相で、意外かつ納得感あって良かった。よく考えると河川敷という凧揚げのシチュエーションにもふさわしい。
しかし、やはりこれは正月にアニメ化するべきだったと思う。そもそも見たい夢を見るモチーフが初夢から来たものだろうし、オチも親戚の登場が唐突でもお年玉であれば季節自体が伏線になる。
しずちゃんの描写も羽根つきからバドミントンに改変され、墨をぬられて怪物と思う描写は、向かってくるシャトルを小さな怪物と思いこむという唐突で恐怖感の足りない描写になった。


エスパースネ夫」は、超能力者になろうとしたのび太が、ジャイアンスネ夫に笑われる。そのしかえしとして、いったんスネ夫を超能力者と自認させ、注目を集めたところで……
2006年にアニメ化された後期短編のリメイク。もはや超能力者の実在性が半信半疑で語られる時代でもなく、SF作品の存在として位置づけられている。
もちろん原作の時点で超能力を盲信することを冷ややかに描いていたが、実際に超能力をつかえていたのに人々の前では失敗して失墜する展開は、『リング』の元ネタにもなった千里眼事件から来ているのではないだろうか。
ともかく、全体としては忠実なアニメ化だったと思う。原作ではいつもの横倒しの土管をふたりがかりで持ちあげるが、さすがに無理があると考えたのか今回のアニメでは立っている小さな土管を倒す描写にアレンジ。
さらにジャイアンスネ夫の超能力を目撃して協力者となるアレンジがほどこされたが、これも前述の千里眼事件で福来友吉という学者が超能力の信奉者になったことから、違和感がない。アニメオリジナルでテレパシー実験を追加し、のび太が小声でジャイアンに悪口をささやくギャグも楽しい。