法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『蠅男の逆襲』

研究者の父が亡くなった真相について、伯父が青年に教えてしまった。青年は伯父をおどすように、父の研究をひきついで完成させようとするが……


前作『蠅男の恐怖』のヒットを受けて、1959年に作られたモノクロ映画。監督はエドワード・L・バーンズに交代。

つづけて鑑賞することで、なぜ前作が先入観とまったく違う内容だったのか判明した。
『蠅男の恐怖』 - 法華狼の日記

モノクロではなくカラー映画ということに驚いた……もちろん太平洋戦争以前からカラー映画が存在していたことは知っているし、モノクロでないことに驚いたのは別の原因もあったのだが……

事故後の夫が顔を布で隠して、蠅男の姿をしばらく映像で見せない演出も効果的。蠅男のビジュアル自体も記憶とまったく違っていて、なかなか良い特殊メイクだった。

単純な話、私がホラー映画の書籍などで目にしていたキービジュアルは、実は『蠅男の逆襲』のものだったわけだ。


カラー映画でも書籍に引用されている場面写真はモノクロになることはあるが、ハエ頭のデザインがまったく違うので、どちらを記憶していたか判断できる。
『蠅男の恐怖』のハエ頭は毛だらけの獣が混じったようなデザインで、布で隠せば一般人と区別できないくらいのサイズ。『蠅男の逆襲』のハエ頭は蝿をそのまま巨大化したようなデザインで、丸い複眼が目立つ大きなサイズの被り物。
おそらく書籍などに引用する時、パッと見てハエとわかるデザインだからという理由で続編が選択されたのだろう。


作品そのものは評価が高くないらしいが、前作より尺が短いこともあり、テンポの良い現代的サスペンスとして見やすい。
青年につめよられて研究を支援する伯父の葛藤が面白いし、青年をそそのかして研究を後押しする悪人なども登場し、いりみだれる思惑が状況を変転させていく。悪人をさぐっていた刑事が反撃され、死体が物質転送機に隠されるあたりのドタバタ感は嫌いじゃない。
TVムービーなのか、あまり予算を使った作品ではないが、おかげで美術セットのトーンが統一され、科学技術ホラーとしてビジュアルがはっきりしている。
ただ、悪人を倒した後に物質転送機をつかって元にもどってハッピーエンドというのは、良くも悪くもライトに楽しむべき、後に残らない作品だとも思った。