台北当代芸術館で4月18日から開催予定と美術手帖が伝えている。
「表現の不自由展・その後」、台湾の美術館で開催へ。《平和の少女像》も展示|美術手帖
開催理由については次のようなコメントを得た。
「台湾には現在、アートや文化に対する検閲はない。しかし、アートや文学などはいまだに伝統的な考え方に制限されている。台湾の歴史を見ると、過去には様々な検閲が実際にあった。例えば日本統治時代の台湾では、特定の歌を歌うことができなかった。また台湾には白色テロの時代があり、戒厳令解除後でも一時的に様々な制限があった。今回の展覧会を通し、日本をはじめ、台湾やアジア、そして世界中の『不自由』を考察したい」。
《平和の少女像》の展示はほぼ決定しており、加えて「あいちトリエンナーレ2019」の不自由展から6〜7点を展示予定だという。さらに同展では、台湾において検閲された音楽や文学、美術なども展示。ワークショップやトークイベントなどを行い、台湾における文化的表現に対する検閲を考察するとしている。
台北当代芸術館は、この展覧会のために諮問委員会を設立。「表現の不自由展」実行委員会とも連携しており、具体的な出品作品や作家に関しては、現在も日本側と検討している段階だという。
芸術館側の回答には、近年に独力で民主化を達成した国だからこその自負と、歴史を見つめようという意思を感じる。
日本統治時代の検閲への言及は、芸術館が日本占領時代の小学校を転用している歴史も念頭にあるのかもしれない。
ちょっと興味深いのが、はてなブックマークで支持するようなコメントがならぶなか、記事本文を読んでいないとしか思えないite氏*1がはてなスターを集めていること。
[B! 表現の不自由展] 「表現の不自由展・その後」、台湾の美術館で開催へ。《平和の少女像》も展示|美術手帖
b:id:ite 中国で禁止された表現が並ぶなら面白いが、日本でやったのと同じなら単なる反日プロパガンダだろう。本当の表現規制と人権侵害が中国にはある。そこに日本の左翼が出て行っても相手にされるとは思えない。
しかし先に引用したとおり、日本で開催された時の展示物も展示予定だが、台湾で検閲された作品も展示されると明記されている。
また、美術手帖によれば芸術館側が諮問委員会を設立し、日本の不自由展実行委と連携しているとある。台湾美術関係者が主体的な存在と思えないのはなぜだろうか。
そもそも政治体制が異なる台湾で、中国で禁止された表現がならばないと面白がれない意味がわからない。かつての国民党と同じような、ひとつの中国論者なのだろうか。
とはいえ台湾では攻撃されていない表現が展示されるのは、あくまで参考の意図なのだろうと思ったが……そういえば1年半前に異なる慰安婦像が敵意を向けられた事件もあった。
慰安婦像を蹴った疑いの日本人男性、移民署が法的措置検討/台湾 | 政治 | 中央社フォーカス台湾
内政部移民署は10日、南部・台南市に設置されている慰安婦像を蹴った疑いが持たれている日本人男性について、蹴ったのが事実だと判明すれば「法的措置を取る」と発表した。また、すでに男性が器物損壊罪で刑事告訴されているのを受け、司法機関の調査と裁判の結果に応じ、男性を入国禁止またはビザ(査証)なし入国を適用しないブラックリストに記載する方針を示した。
これに限らず、慰安婦をいたわる記念碑を抑圧しようとする日本の政府や自治体の動きは各国でおこなわれている。
日本が愚かな攻撃をつづけるほど、どの国や地域でも少女像は不自由展にならぶべき作品になってしまう。
本当に痛ましく心苦しいことだ。
*1:旭日旗が「反日プロパガンダ」という主張には、意図しない皮肉を感じないでもないが。旭日旗も「反日」という解釈になるよね、「表現の不自由展」に選ばれたら「反日」の文脈になるならば - 法華狼の日記