法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ヴァンパイア 最期の聖戦』

手作りの武器で吸血鬼退治をおこなうジャック・クロウと愉快な仲間たち。
さっそく一仕事を終えた彼らは、売春婦とともにどんちゃん騒ぎをくりひろげる。
しかしそこに数百年を生きる吸血鬼のボスが復讐のため近づきつつあった……


現代を舞台に吸血鬼との戦いを描く、1998年のアクションホラー映画。ジョン・カーペンター監督は脚本や製作、音楽まで兼任。

全体の印象としては、『ゴーストバスターズ』シリーズにスプラッターを足して、ややシリアスなメロドラマにまとめたといったところ。
直前に監督したリメイク版『光る眼』や『エスケープ・フロム・L.A.』は3DCGの質感の無さや使いどころの下手さが残念だったが、今作で目立つ3DCGはタイトルくらい。本編では過去作と同じアナログ感いっぱいの特撮が手堅く楽しい。景気よく人体が切断され、吸血鬼が地中からはいあがる。
この作品での吸血鬼の弱点は日光だけだが、それゆえどのように屋外へ引きずりだすかが一貫した課題となり、アクションは大味なのに頭脳戦っぽさと現実味がある。日光をあびた吸血鬼から炎が噴き出る描写も、敵を倒したことが絵としてわかりやすく、良い意味でゲームのようだ。
画面に映されるのは安っぽい田舎町ばかりだが、それぞれの状況でゲームのように吸血鬼を探して倒す舞台としては適度な広さ。古い建物ゆえに人力で壊せたりもして、それもゲーム攻略に似た戦いの楽しさを生む。


そんな安っぽいB級映画らしい画面でありつつ、吸血鬼を題材としたモダンなドラマとしての良さもある。
吸血鬼化しつつある売春婦に仲間が心を寄せていく展開がていねいだったり、信仰の無力さをつきつけるどんでん返しがあったりと、あくまで吸血鬼は怪物的な敵でありつつ、人間社会の秩序も絶対視はしない。
戦いの理由を外部に求めないからこそ、仲間との関係性を大切にしつつ吸血鬼を倒すため戦いつづけるジャック・クロウが、狂信ではない信念をもった主人公として魅力があるのだ。