法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『岸辺露伴は動かない』(8)「ジャンケン小僧」

岸辺露伴の家に押しかけた少年が、漫画に新登場した敵「ホットサマー・マーサ」のデザインがおかしいと指摘する。露伴は少年をつきはなすが、そのデザインはたしかに少年の指摘したように編集部の意向で改変されたものだった。しかし少年は露伴を批判的に考えるようになり、ジャンケン勝負をいどむ……


年末の恒例となった荒木飛呂彦原作のNHKドラマ3期。超常能力で他人の記憶をのぞく漫画家が、自分以上に奇妙な出来事に直面していく連作物語集。
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今回は小林靖子は脚本協力にとどまるが、前回から直接につづく前後編。奇妙なファンに困らされながら編集との葛藤で終わった前回に対して、今回は一理はある熱狂的な読者と妥協した漫画家の衝突が描かれた。
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岸辺露伴は動かない』の原作はほとんど読んでいないのに今回の設定や状況に見おぼえがあったので不思議だったが、岸辺露伴がサブレギュラーとして暗躍する本編漫画『ジョジョの奇妙な冒険』から引いたエピソードだった。
漫画の「スタンド」設定がつかえず、「ギフト」と呼んでいるドラマということもあって、少年が超常能力に目ざめたのは四ツ辻の神秘によるものという前回の描写を引いたもの。四つが不安定で三つが安定するというテーマも一貫させ、ジャンケンの三すくみに特別な意味をつける。
以降の展開は幸運を心意気でひきよせる原作テーマを正面から描いていく。頭上から落ちてくるガラス片が肉体に当たらない描写などは記憶にあった。最終的に少年の心意気を露伴が認める結末も原作どおりだが、そこに漫画家と読者という関係を足したアレンジで対等な存在とは少し違う味わいになっている。悪くはない。